運転免許証のお試し返納について宇治署員から説明を受ける男性(宇治市槙島町)

運転免許証のお試し返納について宇治署員から説明を受ける男性(宇治市槙島町)

 高齢ドライバーが運転免許証を持たない生活を1カ月間送る「お試し返納」を京都府警が始めた。高齢者の重大交通事故が相次ぐ中、免許証の自主返納を検討してもらう全国的に珍しい取り組みで、29日には、第1号として京都府宇治市槙島町の会社員男性(68)がお試し返納。自宅で免許証を保管し、移動手段などについて警察官や自治体職員が相談に乗る。

 お試し返納は、府警が昨年11月、高齢運転者交通事故防止のアイデアを募集し、最優秀賞に選ばれた案。京都橘大のゼミ生たちが考案した。同大学4年倉谷沙織さん(22)は「車が無い生活を無理なく続けられる期間として1カ月に決めた」と話す。
 府警は「お試し返納証明書」を交付する。同日、男性に交付した宇治署交通課の担当者は「愛着を持った資格を手放すことに、心理的な抵抗のある人が多い。一時的に免許を持たない時期を経験してもらいたい」とお試し返納の狙いを語る。「外部の支援があると、自分で決めて取り組むより続けやすいのでは」とも期待する。
 宇治市と久御山町を管轄する同署は、運転免許証を持つ65歳以上が府内25署で最多。管内の病院などに免許証の自主返納窓口を設けたり、署員らが高齢者の自宅を訪れ相談に乗ったりするなど、免許返納に向けた取り組みを拡大してきた。「自主返納制度を知らない高齢者が多い。お試し返納を通じ、制度を広く知ってほしい」(同課)。
 宇治市の男性は、お試し返納を始めるきっかけについて、交差点での右折時に、直進する対向車に気付かなかった経験を挙げる。「同乗者に運転ミスを指摘され、自分の判断能力の衰えに気付いた」
 現在は、主に買い物やレジャーで週3回ほど車を利用する。自主返納を検討しているが「時期はまだまだ先」。期間中の移動には、主に自転車を使い、遠方へ向かう際は娘に送迎を頼む予定だ。男性は「自転車で20分の範囲で日常生活が送れる。車が無いと生活にどう影響するのか参考にしたい」と話す。
 緊急時の運転など免許の必要性については本人に任せ、署員などが随時、本人や家族の相談に応じる。期間終了後に引き続き免許所持を希望する場合、高齢ドライバー実技研修会の参加などを紹介する。お試し返納は府警の各署で対応している。