リンゴの絵が描かれたカードを引いた男の子が「アイ・アム・アップル」と楽しそうに言う。でも、ちょっと変だ。「私は(人間ではなく)リンゴです」と言おうとしているのだから▼同時通訳で知られた鳥飼玖美子さんが著書で紹介したある小学校の英語の授業のようすだ。引いたカードの絵を示すゲームだが、あり得ない英語が刷り込まれてしまわないか懸念する。専門家でない先生が教える怖さの一例だ▼来春から正式教科となる小学校英語。最も戸惑っているのは教える側ではないか。中学や高校の英語教員免許を持つ先生は一握り、大半の教員が「無免許」のまま教える。もはや楽しませるだけの授業では済むまい▼英語力向上の必要性は多くの人が認める。だが、それがなぜ小学校からなのか。議論を尽くしたとはいえない中、来春から使用する教科書が公表された▼扱う単語は600語以上で、今の中学生が覚える語数の約半分にあたる。週2こま程度の授業で、どこまで消化できるのだろう。学習量の多さが英語嫌いを増やすとの心配もある▼ただ、小学校で習う程度の英語は中学生がまじめに勉強すれば簡単に追いつけると、鳥飼さんは言う。英語との付き合いは長くなる。継続して学ぶためのスタートラインをどうつくれるかが問われている。