静岡県熱海市で大規模な土石流災害が発生して1カ月がたった。

 22人が死亡し、なお5人が行方不明のままで、県警や消防の捜索活動が続けられている。

 崩落した土砂に自宅を押し流されるなどして、3日現在で住民291人が避難生活を余儀なくされている。

 不明者の捜索と現地の復旧、被災者たちの生活再建に手を尽くす必要がある。

 同時に、土砂崩落の起点での盛り土を巡り、色濃く浮かぶ「人災」の要因を究明し、今後の土砂災害対策につなげねばならない。

 土石流は、約5万6千立法メートルの土砂が崩れ落ちて約130棟を押し流し、約2キロ下の伊豆山港まで到達した。大量の土砂とがれきで住宅地が覆われ、不明者の捜索は難航を極めた。完全撤去に2~3カ月はかかるとみられている。

 県は公営住宅など176戸を確保し、被災者の入居受け付けを始めた。きめ細かで継続的な支援が求められる。

 今回注目されたのは、自宅を失うなどした避難者を市内2カ所のホテルで受け入れたことだ。

 体育館などの避難所に比べ、客室で周囲への気兼ねがなく、密集もしないのでコロナ対策上も有効という。各自治体は宿泊施設の確保策や経済的負担の軽減措置などで備えておく必要があろう。

 一方、発生原因の調査では、崩落した土砂の大半が土石流の起点にあった盛り土とみられ、被害との関係が強く疑われている。

 県や市によると、前の土地所有者の不動産管理会社(清算)が2007年に市に届け出た造成計画を超えて盛り土を拡大。条例で義務付けられた排水設備を設置しなかった疑いもある。

 同社が木くずも埋めるなど問題行為を繰り返し、自治体が危険性を認識して行政指導を再三行ったのに、改められないまま重大災害が起きたのは看過できない。

 建設残土を処分する盛り土全般の規制法はない。京都など26都府県は、一定規模以上を許可制にするなど独自条例を持つが、内容はまちまちだ。地方自治法で条例の罰則上限は懲役2年以下、罰金100万円以下のため、罰金を払っても「やり得」と強行したり、規制の緩い地域に運んだりする業者が後を絶たないという。

 全国知事会は、全国統一の残土規制の法制化を緊急要望している。政府が進める全国各地の盛り土の安全性点検と併せ、残土の発生段階から適正処分の責任を課す実効性ある法規制が急がれる。