亡き妻と戦友を思い、仏像を彫る藤坂さん(亀岡市保津町)

亡き妻と戦友を思い、仏像を彫る藤坂さん(亀岡市保津町)

 亡き妻と戦友をしのび、亀岡市保津町の男性が15年以上にわたり仏像を彫り続けている。独学で学び、仏師に誘われるほどの腕前を持ち、自宅に30体以上が並ぶ。「妻にも戦友にも大きな恩がある。命がつきるまで彫る」と語る。

 元大工の藤坂政美さん(89)。戦時中、海軍航空隊に志願し、特攻隊員となった。多くの戦友を見送り、空襲も経験しながら生き延びた。

 7人きょうだいの長男で家は貧しかった。戦後、敏子さんと結婚後も、幼かった弟妹と、自身の子ども2人を夫婦で育てた。皆が成長した2000年秋、敏子さんに病が見つかり、半年後に63歳で亡くなった。

 「コンクリートの壁に閉じ込められているようだった」。四国八十八カ所霊場巡りや写経を繰り返すうち、仏像を彫ろうと思った。

 02年夏、観音像を彫った後、本や寺社の実物から学び、3年ほどでこつをつかんだ。それまで戦争経験は心にしまい込み、家族にも打ち明けなかったが、平和を祈ってのみをふるった。仏師の目にとまり、工房に誘われたこともあったが、「自分の中に何かが沸き上がった時だけ仏が現れる」として断った。

 藤坂さんは「妻には苦労をかけたのに、恩返しできなかった。戦争でなぜ自分が生き延びたのか、分からない。妻や戦友の供養になれば」と語る。