耐震化工事中の彦根市役所本庁舎。工事中断後、3度の入札不調で再開の見通しが立っていない(彦根市元町)

耐震化工事中の彦根市役所本庁舎。工事中断後、3度の入札不調で再開の見通しが立っていない(彦根市元町)

 公共事業の建設工事で入札不調が増えている。滋賀県内でも、2024年滋賀国体(国民スポーツ大会)の主会場として彦根市に整備する競技場や、市役所の庁舎耐震化の工事入札が不調に終わった。双方とも予定価格との間に隔たりがあり、人手不足に伴う人件費増や資材高が続く中、見積もりに実勢価格を反映できていない事情があるようだ。参加業者の少なさも目立つ。自治体側は適正な価格の積算や工期の融通など、業者の側に立った施策がより求められていると感じる。

 「いつ、この入札を乗り越えられるのか。早く落札して安心させて」。9月中旬に開かれた彦根市議会の企画総務消防常任委員会で、議員から切実な声が響いた。市役所の本庁舎耐震化工事で、建築工事の入札が3度目の不調に終わった。設備工事の仮契約を解除し、11月下旬に一括入札して業者の意欲を高める方針が示されたが、先行きを懸念する発言が相次いだ。

 工事を巡っては、昨年、市と施工業者間で一部工事を間引きする「裏合意」が発覚。中断後、残工事の入札は不調が続く。9月下旬にあった新市民体育センターの入札も不調に終わっている。

 県でも、滋賀国体の主会場として同市に整備する「(仮称)金亀公園第1種陸上競技場」の入札が不調に。全国で見ても、都道府県発注工事の不調率は18年度で7%と、ここ3年で2・3ポイント上昇した。

 入札価格が予定価格を大きく超過したケースが目立つ。市役所本庁舎の3度目の入札は、事前公表で臨んだ予定価格24億8300万円に対し、最も近い業者で4億3200万円上回った。国体主会場でも約20億円超え、予定価格の4分の1ほどの開きがあったとみられる。応札業者が1~3者と少ないのも共通する。

 価格が合わない理由に、人手不足に伴う人件費増や、東京五輪、大阪万博を控えた民間工事の活況による資材高があるとされる。これらを含む建設工事費の実質額を示す国の指数は11年度比で10ポイント以上高く、消費者物価指数の上げ幅を大きく上回る。

 参加業者の少なさも、人手不足が起因している。業者でつくる県建設業協会(大津市)は「現場監督にする技術者が足りず、入札に参加できていない」と漏らす。

 自治体では通常、予定価格を算出する際、設計価格に対して掛け率を設けるなどして実勢価格を見積もる。彦根市の担当者は「近年の大型工事を参考にしてきたが、見通しが甘かった。より市場に見合った価格になるように検討を重ねる」とする。

 資機材や人材を確保する期間をつくるため、野洲市のように工事着手日に余裕を持たせる制度を設ける動きも出てきた。建設業界の厳しい状況は続くとみられることから、自治体側も「選ばれる側」に立ち、工事の発注方法を工夫する必要があると感じる。