京都アニメーション(京アニ)の放火殺人事件から3カ月超が過ぎた。取材を通して記者は、京アニの作品やスタッフが、国内外を問わず多くの人に愛されていることを実感した。アニメに描かれた場所を訪ねる「聖地巡礼」は、地域の人やファンの絆をつむいできた。京都、滋賀にある聖地では、事件後、悲しみに暮れながらも、前を向いて歩き出そうとする人たちの姿があった。

■大吉山展望台 「響け!ユーフォニアム」

明かりがともり始めた宇治市街地を一望する大吉山展望台。街灯のない山道は、夜には真っ暗になる(9月17日午後6時36分、京都府宇治市宇治) 

 京都府宇治市宇治の世界遺産・宇治上神社近くの登山道を東に15分登ると、市街地を見渡す「大吉山(仏徳山)展望台」に着いた。朝の散歩コースという地元の女性(74)によると、事件を境に外国人の姿をよく見かけるようになったという。

 聖地巡礼のために中国から1人で来た程涵(チェンハン)さん(24)は、4日間の日程で京都府内のアニメの舞台を見て回っていた。「絵や色彩にインパクトがある」。特に京アニ作品が好きで、理解を深めるため日本語も独学で学んだ。

 「響け!ユーフォニアム」は一番のお気に入り。インターネットで調べるうちに聖地巡礼を知った。大吉山展望台は印象的なシーンに描かれており、来たかった場所の一つ。

 「事件は悲しい」。アニメを通じて知り合った中国の仲間たちも涙を流したという。ネットから寄付もし、被害者の回復を祈る。「また新しい作品が見たい」と、再興を願っていた。

■旧豊郷小 「けいおん!」

休日に誰でもセッションできる旧豊郷小の唱歌室。ファンらがアニメを通じて輪をつないできた(8月31日、滋賀県豊郷町)

 2009年に放映された「けいおん!」の舞台とされる旧豊郷小(滋賀県豊郷町石畑)。校舎内の黒板を埋める京アニへの激励や感謝の言葉を読んでいると、どこからか楽器の演奏が聞こえてきた。音がする唱歌室に入ると、たまたま居合わせた人が即興で合奏する「セッション」を繰り広げていた。

 ベースを弾いていた30代の会社員男性=名古屋市=は、2年前に購入した楽器が、アニメで登場する同じモデルだったと知った。「けいおんってここやったよな」。ネットで旧豊郷小の場所を調べ、楽器を持って初めて訪れた時、滋賀県東近江市の30代会社員男性と知り合った。

 東近江市の男性はアニメで楽器に興味を持ちベースを始め、約10年前から通っている。「当時は演奏する人がいっぱいで、声を掛けてもらった。人の輪がふくれあがった」と、今でも気ままに足を運ぶ。

 旧豊郷小で声を掛け合ったファンらは「とよさと桜高軽音部」というグループをつくり、誰でも演奏を楽しめるようにと、校舎内に楽器を置いている。11月には、事件で傷ついたファンらが前を向くために、京アニ作品で流れる曲を演奏するなどのイベントを、校舎内で開く。「最初はふさぎこんでいたけど、みんなと一緒に進めたら」と期待する。