アフガニスタン情勢が緊迫している。駐留米軍の撤退が進む間隙を突いて、反政府武装勢力タリバンが大攻勢をかけ、支配地域を次々に拡大している。

 首都カブールに向け進撃しており、激化する政府軍との戦闘に巻き込まれた民間人の犠牲や難民が急増している。

 米政権は「深刻な懸念」を示し、空爆によるアフガン政府軍支援は続けるとするが、8月末までに駐留部隊撤退を完了する計画を変えない姿勢だ。

 20年に及ぶ「米史上最長の戦争」からの離脱を自国民向けに成果として示したいのだろう。だが、瀬戸際のアフガン・ガニ政権を見捨てるような姿勢に内外から批判の声が上がっている。

 米国は長期の介入でアフガン混迷を招いた。現地の戦闘停止と和平実現へ責任を果たすべきだ。

 タリバンは4月下旬からの米軍撤退で生じた「力の空白」に攻勢を強めた。全34州都のうち10州都を制圧したとし、支配地区は4月中旬の約70から200以上に広がり、全土の約6割に及ぶという。

 米軍の撤退作業は95%以上を終えており、後ろ盾を失ったアフガン政府軍は劣勢が続く。この数カ月で戦闘地域から数十万人が避難したとされる。

 国連アフガニスタン支援団によると、市街戦に巻き込まれるなどして7月に3都市で千人以上が死傷した。民間人被害は集計を始めた2009年以降の最悪水準で、「暴力を止めなければ前例のない数が死傷する」とする支援団の警告は重い。

 ところが、バイデン米大統領は「アフガン人が自分の国のために戦わねばならない」と突き放し、撤退の見直しを否定している。

 背景に米国内の厭戦(えんせん)感がある。

 米同時多発テロから来月で20年になる。米国は「テロとの戦い」でタリバン政権を崩壊させたが、これまで1兆ドル(約110兆円)以上の戦費、2千人超の米兵死者を出してきた軍事作戦への風当たりが強まっていた。

 ただ、米国が出口戦略の柱とした昨年2月のタリバンとの和平合意は崩壊寸前だ。恒久停戦に向けた双方の協議は停滞し、戦線拡大と力関係の変化で先が見通せない。ガニ政権に丸投げで済まされない。

 米議会野党の共和党からは、米軍撤退は拙速として方針転換を求める動きも出ている。

 米国には危機の収束と和平への道を開く責任がある。国際社会の外交的協力と人道支援も求められよう。