への字形の口が特徴的なハス。40センチの成魚が捕れることもあるという

への字形の口が特徴的なハス。40センチの成魚が捕れることもあるという

ハスのつくだ煮。湖魚特有の生臭さはなく柔らかくて食べやすかった

ハスのつくだ煮。湖魚特有の生臭さはなく柔らかくて食べやすかった

 3月になっても湖からの肌寒い風が吹き付ける滋賀県東近江市栗見出在家町の能登川漁港。正午前、沖島の漁師奥村繁さん(71)の船が港に着岸した。

 沖合の水深85~90メートル地点での底引き網で捕れた、生きの良いスジエビやホンモロコ、イサザが次々と水揚げされる。その中に小さな目と銀色に光るうろこ、そして「へ」の字形の口が特徴的なハスがいた。

 ■「琵琶湖八珍」選定

 ハスはコイ科の淡水魚で、琵琶湖の特徴的な魚介類として、県のブランド「琵琶湖八珍」に選定されている。湖魚では珍しくコアユなどの魚を捕食し、獲物を追いかけて泳ぎ回るどう猛な性格だといわれる。

 体長数センチの稚魚から、約20~40センチの成魚まで食用にできるのが特徴。冬や春には稚魚が、夏には成魚が捕れ、特に大型のものがおいしいという。

 この日は親指くらいのものから20センチ以上まで、計42匹約1キロが水揚げされた。「大きさがバラバラなのは、迷い込んだ魚が網にかかっているから。集まっている場所で刺し網漁をするとサイズがそろう」

 奥村さんによると、琵琶湖ではハスを専門とした漁はなく、自身もスジエビが狙いだという。卸売業者の買い取り価格は20年ほど前は1キロあたり約250円だったが、消費量の減少やサイズがそろわず売りにくいなどの理由で、今では5分の1に下落した。「ハスはお金にならない。底引き網や地引き網で、ついでに捕れる魚」と話す。

 ■頭から食べられる

 魚介類は水揚げ後、すぐに魚の卸売・小売業「ヤマサ水産」(近江八幡市鷹飼町)の従業員岸新一さん(53)が、トラックで買い取った。岸さんによると、昨年よりハスは少なく、10~20センチくらいの中ぶりが目立つという。

 「身はとても淡泊であまり味はしない」と岸さんが教えてくれた。頭が柔らかく、大きなものでも丸ごと食べられる。一方で小骨が多く、好みが分かれるらしい。

 同社で扱っているつくだ煮を購入した。塩気の中に甘みもあり、頭から尾びれまで柔らかいのでかみやすい。淡水魚特有の生臭さやクセはなく、ご飯が進む。岸さんは「箸休めや酒のつまみにちょうどいい」と語る。夏に捕れる大きいハスは、塩焼きやみそ田楽、刺し身にするそうだ。

 漁でも食卓でも主役になることはあまりないが、湖魚の脇役として独特の存在感を放っている。