曽祖母が編んだ手袋をした手を引っ張られて天神さんへお参りした帰りに、いつも薬局に寄りました。波打った硝子(ガラス)戸を開けると飛び込んでくるのがさまざまな漢方薬の香り。「肉桂(ニッキ)おくれやす」。曽祖母が言うなり薬局の旦那さんは薄紙に肉桂の粉をサラサラと入れ、四角に畳んで手渡してくれました。手袋には肉桂の香りが染み付いていて、香水をつけてもらったようで誇らしかったのを覚えています。

 曽祖母と私で甘い香りを携えながら家に着くなり、「おあえ」というおかずを作ってくれました。ゆでたサツマイモとこんにゃくを、白みそとごまで作った衣であえ、仕上げに包みをそうっと開けて、パラパラと振りかけて完成です。

 京都の人に、おあえって食べてました? と聞いても、なにそれ、と首をかしげるばかり。曽祖母の知恵を絞ったおかずなのでしょうか。きちんと聞いておけばよかったと今更ながらに思うのです。


◆小平泰子 こひら・やすこ 1977年京都市生まれ。旬の食材を使い、和食にとらわれず、食材の組み合わせの面白さを提案したレシピを考案。中京区烏丸三条と東京・日本橋で料理教室を開く。近著に「季節の野菜と果物でかんたんおつまみ」がある。インスタグラムはyasukokohiragokan