政府が病気の予防などに積極的に取り組む自治体を支援する交付金の大幅増額を検討している。

 2020年度予算案で19年度比50%増の1500億円程度を計上する方針だ。5年で10倍という異例の伸びである。

 地域で糖尿病などの検診や、重症化する前の健康管理を徹底し、医療費抑制につなげる狙いがある。

 22年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり始める。安倍晋三政権は、病気や介護状態になる前の予防促進を社会保障改革の柱に据えている。

 交付金拡大は政府の「全世代型社会保障検討会議」で12月にまとめる中間報告でも、中心に位置づける見通しだ。

 病気の予防に異論はない。だが本当に医療費の抑制につながるかは専門家の評価が割れている。政策として予防事業を進めるには、少なくとも費用対効果はもっと問われるべきではないか。

 08年に始まった特定健康診査(メタボ健診)では、栄養指導などを受けた1万人超の医療費の抑制効果は1人当たり年6千円と限定的だった。一方で指導に1万8千円費やしており「むしろ赤字」との声も聞かれる。

 それでも医療費膨張が歳出改革の標的となるたびに、歴代政権によって予防を通じた医療費抑制の試みが繰り返されてきた。

 国民の「痛み」を伴う負担増や給付削減と比べて反発が少なく、政権にとって目先を変えたい思惑もあるからだろう。

 医療費はこの30年間で約2・5倍と急速なペースで伸びている。抑制への取り組みは急務だが、政策目的や効果の検証があいまいでは、かえって予算のばらまきだと批判を招きかねない。

 制度設計にも問題はないか。

 拡充するのは「保険者努力支援制度」の交付金だ。実績がある自治体に手厚く配分する一方、メタボ健診の実施率が低いなど消極的とされる自治体への交付金を減らす「アメとムチ」も導入する。

 取り組み実績に応じた「点数」を競い合う仕組みに困惑する自治体も目立つという。転入転出が多く継続的な取り組みが難しい地域は不利になるためだ。

 交付金は良い動機づけになる半面、獲得を優先し過ぎると制度をゆがめる恐れがある。

 さらに心配なのは、「不健康は悪」と見なす考え方を助長しかねないことだ。病気の人や要介護者など、さまざまな立場への目配りを忘れてはならない。