より本物らしく

 京で江戸時代中期に活躍した絵師円山応挙(1733~95年)の存在感は、日本の絵画史でもひときわ目立つ。独自の画風が人気を誇るだけでなく、多くの弟子を育て、近代京都画壇で円山・四条派と呼ばれた流れの源流にあたる。その歴史を追う名品を一堂に集めた展覧会「円山応挙から近代京都画壇へ」が11月2日、京都市左京区の京都国立近代美術館で始まる。

円山応挙「郭子儀図」(全8面のうち4面)  重要文化財 1788年 兵庫・大乗寺蔵 通期展示
円山応挙「松に孔雀図」(全16面のうち4面) 重要文化財 1795年 兵庫・大乗寺蔵 通期展示

 現在の亀岡市で生まれた応挙は、中国絵画を範とした伝統とは一線を画し、しっかりした観察に基づく写生画を確立した。博物学や解剖学など海外の学問が流入する時期で、骨格や顔の特徴など人体に関する知識も貪欲に学び、本物らしく見せる工夫を続けた。絶筆とされる「保津川図」では、黒い岩を丁寧に何度も重ね塗りをして絶妙な濃淡を描き出しており、晩年まで力を注ぎ続けた姿勢をうかがわせる。

円山応挙「保津川図」(右隻) 重要文化財 1795年 千總蔵 後期展示

 応挙や一門の手による重要文化財が多く残り「応挙寺」とも呼ばれる大乗寺(兵庫県香美町)からは障壁画を展示する。奇想の画家として知られる長沢芦雪や、源琦、岸竹堂ら円山派を代表する著名な画家の作品もある。

岸竹堂「猛虎図」(右隻) 1890年  千總蔵 後期展示

 同展は、前後期の入れ替えを合わせて、重要文化財8件を含む計109件を展示する。風景画や美人画、動物画のジャンル別に並べられ、近代京都に受け継がれる応挙の系譜を一望できる。

円山応挙「牡丹孔雀図」(重要文化財) 1771年 京都・相国寺蔵 後期展示
円山応挙「狗子図」 1778年 敦賀市立博物館蔵 前期展示

受け継いだ円山・四条派

 与謝蕪村に文人画や俳画を学んだ呉春(1752~1811年)は、蕪村没後に応挙の画風を学び、写生画を文人画に融合させた叙情的な独自の画風を確立した。呉春門下が四条通沿いに多く住んだために、画風を受け継いだ一派は四条派と呼ばれる。

呉春「山中採薬図」 江戸時代後期 公益財団法人阪急文化財団 逸翁美術館蔵 後期展示

 今年は東京でも開催された本展をはじめ、呉春や四条派を扱う特別展が各地の美術館で企画され、注目を集めた。4~5月には兵庫県西宮市の市大谷記念美術館で「四条派への道 呉春を中心として」展が開かれ、大倉集古館(東京)では「桃源郷展―蕪村・呉春が夢みたもの」、逸翁美術館(大阪府池田市)では「画家『呉春』―池田で復活(リボーン)!」が現在開催されている。

上村松園「楚蓮香之図」 1924年頃 京都国立近代美術館蔵 後期展示

 呉春は大乗寺の障壁画も手がけるなど円山派と共に活動した時期があり、クジャクやコイを描いた応挙さながらの写実画も残した。一方でそれまでの文人画を捨てることなく、細部を省略して柔らかさを感じさせる四条派の画風を磨き上げた。四条派からは「花鳥は景文、山水は豊彦」と並び称され、多くの弟子を育てた松村景文や岡本豊彦、塩川文麟などが出展されている。

竹内栖鳳「春暖」 1930年 愛知県美術館蔵(木村定三コレクション) 後期展示

 近代以降、円山派と四条派はその画風の親密さからか「円山・四条派」と呼ばれるようになった。両派に師を持つ幸野楳嶺や、門下の上村松園、楳嶺四天王と呼ばれる竹内栖鳳や菊池芳文らが博覧会や文展で活躍し、円山・四条派の地位を確立した。

菊池芳文「小雨ふる吉野」(左隻) 1914年 東京国立近代美術館蔵 前期展示


◆源琦(げんき)(1747~97)  駒井源琦とも。京都生まれで、応挙の画風を最も受け継ぎ、応門十哲の筆頭として知られる。長沢芦雪と並び称され、応挙没後の円山派を支え、発展させた。
◆長沢芦雪(ながさわろせつ)(1754~99)  丹波篠山生まれ。応挙門下随一の才能を誇り、写実的な動物画や人物画などで独自の画風を確立した。
◆岸竹堂(きしちくどう)(1826~97)  彦根生まれで、芦雪や四条派の岸連山に学ぶ。写生的な虎の絵が有名で、京都府画学校でも教えた。
◆塩川文麟(しおかわぶんりん)(1808~77)  京都に生まれ、四条派の岡本豊彦に師事。幕末の混乱を避け、琵琶湖などの風景を写生で描く叙情的な作風を構築した。  ◆幸野楳嶺(こうのばいれい)(1844~95)  京都に生まれ、円山派の中島来章、次いで文麟に入門。画学校や画塾で多くの後進を育成し、近代京都画壇の礎を築いた。  ◆竹内栖鳳(たけうちせいほう)(1864~1942)  京都に生まれ、幸野楳嶺らに学んだ。古画や西洋絵画の技法を採り入れ、近代京都画壇を引っ張った。横山大観と同時に第1回文化勲章を受章した。
◆上村松園(うえむらしょうえん)(1875~1949)  京都で生まれ、府画学校のち楳嶺や栖鳳に学んだ。和漢の古典や一般の女性に取材した人物画を多く発表し女性初の文化勲章を受章した。



【会期】11月2日(土)~12月15日(日) 月曜休館(11月4日開館、5日は休館)
※展示替えあり。前期=11月2日~24日、後期=26日~12月15日。
【開館時間】午前9時半~午後5時(金曜・土曜は午後8時まで) 入館は30分前まで
【会場】京都国立近代美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町)
【主催】京都国立近代美術館、京都新聞、朝日新聞社、NHK京都放送局
【入場料】一般1500円(1300円)、大学生1100円(900円)高校生600円(400円)
※かっこ内は前売りと20人以上の団体 中学生以下、障害者手帳提示の人と付き添い1人まで無料(要証明)
【講演会】いずれも無料(本展観覧券必要)で午後2時~3時半、京都国立近代美術館1階講堂にて。定員100人。午前11時から1階受付で先着順に整理券を配布。
 11月2日=「近代京都画壇-美術と産業」並木誠士氏(京都工芸繊維大教授)
 11月9日=「京都画壇と千總―岸竹堂を中心に」加藤結理子(千總文化研究所所長)
 11月30日=「空(くう)を描く」山岨眞應氏(大乗寺副住職)
【ギャラリートーク】11月15日、12月6日いずれも午後6時
【問い合わせ】京都国立近代美術館075(761)4111