建設工事の現場で人手不足の厳しい現状を語る大下社長(京都市右京区)

建設工事の現場で人手不足の厳しい現状を語る大下社長(京都市右京区)

 「建てたい人がいて資金もあるのに、現場に人が足りない。特に若い人が…」

 京都市右京区で建設会社を経営する大下照夫社長(74)は厳しい雇用環境を憂える。住宅やホテル、社寺などを幅広く手掛けているが、東日本大震災の復興事業などの影響もあり、人手不足に拍車がかかっている。近年は建築を学ぶ学生が建設業界を選ばないこともあり、「ライバルは同業や大手だけではない」と指摘する。

■受注の調整も

 特に、建設現場の安全や工程を管理し、協力業者と連携しながら工事を指揮する現場監督の不足は全国的に深刻だ。大下社長は「仕事はあるが、現場が回らなくなるので受注を調整している」と打ち明ける。

 大手就活サイトを使った採用は中小企業には費用負担が大きく、ミスマッチのリスクもある。就職説明会では大下社長自ら業務やビジョンを語った。インターンシップも実施した。幹部が人脈をたどって適任者に声をかけ続けた。何とか、4月からは新卒で1人の入社を確保できる。しかし、理想とする2~3人には届かなかった。「若い人が育たなければ会社の未来はない」。大下社長は力を込める。

 京都府南部の金属加工会社も年間を通して求人を出すが、なかなか採用につながらない。応募はあるものの、比較的若い現場の年齢構成や、コンピューターを使った複雑で創造性を要する作業への適性を考えれば、誰でもいいわけではない。

 応募者の内訳も変わり、以前は多かった経験者が減っている。未経験者でも対応できる仕事を増やすため、受注の幅を広げるなど工夫も重ねる。社長は「インターンシップで来る高校生で、質問や興味の持ち方にセンスを感じて採用したいと思っても多くは進学してしまう」と声を落とす。

■一歩踏み込んだ支援を

 ホームページ制作会社の松田治彦社長(51)は、京都中小企業家同友会で社員共育・求人委員長を務める。「学生がイメージする企業は、大企業や、消費者として接している地域の商店が中心で、その間にある数多くの中小企業が抜けている。知られていなければ選択肢には入らない」と感じる。同会によると、高校や大学の進路担当職員や親の大手志向も、中小企業の人手不足の背景にあるという。

 中小企業の採用は、業績やビジョンではなく、大手企業の動向に影響される。松田社長の会社では、2008年の米リーマン・ショックにより大手企業が採用を絞り込んでいた11年、約2千人から応募があり、自社単独の採用説明会には100人以上が集まった。近年は大手企業の積極的な採用が、中小企業の人手不足に連鎖する。

 中小企業は国内の全事業者数の99・7%、全従業者の約70%を占める。松田社長は「もっと学生と中小企業との接点を増やしてほしい。学生が社会全体を見渡せるような職業観を養う仕組みを整えて」と望む。

 地域経済の足腰となる雇用。企業と人材をつなぐ自治体の役割は一層重みを増す。一歩踏み込んだ支援へ。働く人も雇う側も、地方政治を担う候補者たちの訴えに耳を澄ましている。

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 1カ月後に幕を閉じる平成で最後の統一地方選が京都、滋賀でも始まった。激変の31年間。バブル経済の崩壊や金融危機を経て地域は疲弊した。大きな自然災害が相次ぎ発生したほか、少子高齢化も加速し、住民や自治を取り巻く社会環境は揺れ動いた。平成の軌跡をたどりつつ、京滋の現場で課題と向き合い、次の時代へ一歩を踏み出そうとする人たちの姿を追う。