夕食後、ヘルパーの廣川さん(左)と楽しそうに話す佐々木元治さん=京都市左京区

夕食後、ヘルパーの廣川さん(左)と楽しそうに話す佐々木元治さん=京都市左京区

本を手にする佐々木和子さん。「元治は自立生活で自由や自信、達成感を得ている」と話す

本を手にする佐々木和子さん。「元治は自立生活で自由や自信、達成感を得ている」と話す

 重度の知的障害がありながら京都市左京区で1人暮らしをしている佐々木元治さん(38)の日常の様子を記した本「自立生活 楽し!!」を母親と、介助に携わるヘルパーが著した。国の推計によると1人で暮らす知的障害者は3%と少なく、「親元でも施設入所でもない選択肢があることを知ってほしい」と願う。

 ダウン症の佐々木さんは視力障害や腎臓病の症状が落ち着いた2018年4月、実家近くの賃貸アパートで待望の1人暮らしを始めた。「親亡き後」を心配していた母和子さん(72)も「体力がある今なら手伝える」と息子の決断を後押しした。

 高齢者介護施設とスーパーで週3日働き、障害年金と生活保護を利用して生計を立てている佐々木さん。自分で掃除機をかけ、洗濯機を回して洗い物を干し、米をとぐ。夕食時と、必要に応じて昼食時に居宅介護や移動支援の福祉制度を使い、日本自立生活センター自立支援事業所(南区)のヘルパーに買い物への同行や料理、皿洗い、金銭管理をしてもらっている。

 本は3部構成。親元を離れた息子への不安や喜びを率直につづった和子さんの折々のエッセーをはじめ、廣川淳平さん(40)らヘルパー7人の心構え、自立生活に向けた手順やさまざまな福祉制度が具体的に分かる内容となっている。

 当初の2カ月間は新居になじめず、就寝時に親の付き添いが必要だったが、経験を重ねた今では1人で寝られるようになった。バス通勤をこなすだけでなく、タブレット端末の操作を覚え、趣味の邦楽や洋楽の世界を広げていることを紹介。障害を理由に複数の不動産会社から仲介を断られた差別も明らかにしている。

 食事メニューは佐々木さんが決めているが、ヘルパーが腎臓病に配慮して味付けやタンパク質の摂取量を工夫したり、ヘルパー間で情報共有の仕組みを整えたりしているという。廣川さんは「障害が重くても関係ない。誰もが楽しい人生を送る権利がある」と記す。

 佐々木さんは、取材に対し「僕、幸せです」と笑顔を見せた。表紙には自身が筆で書いたタイトルと、新居の見取り図も掲載している。A5判132ページ。1540円。解放出版社。