開かれた心眼 

重要文化財 愛染明王像 平安時代


 実業の傍ら美術品収集に情熱を注いだ細見良(初代古香庵、1901~79年)の生誕120年に合わせ、コレクションの優品約60件を細見美術館(京都市左京区)で紹介する。重要文化財の愛染明王像(平安時代)をはじめ金工、七宝、茶道具など一点一点から古香庵の愛情が伝わる。

重要文化財 金銅五鈷鈴 平安時代後期
七宝夕顔文釘隠 桃山時代
重要文化財 芦屋霰地楓鹿図真形釜 室町時代

 
 細見良は細見良行館長の祖父にあたる。兵庫県に生まれ、大阪での奉公を経て毛織物業界に入った。20歳代で独立、事業拡大の傍ら古美術の収集を始める。最初は質の良くない品をつかまされるなど失敗もあったが、国立博物館研究者らを積極的に訪ねて教えを乞い、見る目を磨いた。

 愛染明王像は12世紀中頃の作と考えられ、赤黒い体は生々しく、形相も恐ろしげだ。だが眺めるうちに截金(きりかね)の繊細優美な装飾が見えてくる。実業家で数寄者としても名をはせた原三渓が旧蔵した。伊藤京子主任学芸員は「古香庵は三渓や益田鈍翁(どんのう)ら先輩コレクターを尊敬し、追いつこうと努力を重ねた。三渓旧蔵品を入手した喜びは大きかったはず」と推測する。

普賢菩薩像 平安時代後期
重要文化財 金銅春日神鹿御正体 南北朝時代


 金銅春日神鹿御正体(南北朝時代)は鹿の自然な動きや生い茂るサカキの葉など、優れた写実表現が軽やかなリズムを感じさせる。金工品から収集を始めた古香庵を象徴する1点だ。豊公吉野花見図屏風(びょうぶ)(桃山時代)は古香庵も好きだったという豊臣秀吉が奈良・吉野で開いた5千人規模の花見を描く。伊藤さんは「若くして奉公に出た古香庵は専門的知識もなかったが、失敗を重ねて鑑賞眼を磨き、優れたコレクションを作り上げた。各作品のどこにほれたのか、寄り添って見てもらえたら」と話している。
 

重要文化財 豊公吉野花見図屏風(部分) 桃山時代
重要文化財 豊公吉野花見図屏風(左隻) 桃山時代


【会期】8月24日(火)~10月17日(日)
【会場】細見美術館(京都市左京区岡崎最勝寺町)
【開館時間】午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)
【休館日】月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
【入館料】一般1300円、学生1000円
【主催】細見美術館、京都新聞
【問い合わせ】075(752)5555