田辺五郎と京都を襲う積乱雲

田辺五郎と京都を襲う積乱雲

「田辺五郎」の観測に取り組むグローバルサイエンス部の気象班メンバーと、顧問で気象予報士の阪本教諭(右)=京都市伏見区・桃山高

「田辺五郎」の観測に取り組むグローバルサイエンス部の気象班メンバーと、顧問で気象予報士の阪本教諭(右)=京都市伏見区・桃山高

京田辺市付近で急発達する積乱雲「田辺五郎」(2012年8月18日、京田辺市大住・大住中から北を望む)=阪本和則さん提供

京田辺市付近で急発達する積乱雲「田辺五郎」(2012年8月18日、京田辺市大住・大住中から北を望む)=阪本和則さん提供

積乱雲「田辺五郎」が発達する京田辺市付近を中心とした立体地図を作成し、メカニズムを探る生徒たち。田辺五郎は、指し示した地点で急発達することが多いという(京都市伏見区・桃山高)

積乱雲「田辺五郎」が発達する京田辺市付近を中心とした立体地図を作成し、メカニズムを探る生徒たち。田辺五郎は、指し示した地点で急発達することが多いという(京都市伏見区・桃山高)

 大阪から北東に進み、京都府京田辺市付近で発達して豪雨をもたらす積乱雲の研究を、桃山高(京都市伏見区)のグローバルサイエンス部の生徒たちが進めている。たびたび府南部に大水害を起こしたとみられる積乱雲を「田辺五郎」と名付け、発生条件やメカニズムを探っている。

 気象予報士の資格を持つ同部顧問で阪本和則教諭(41)によると、田辺五郎は、大阪湾から淀川沿いに北東へ進む積乱雲で、京都・大阪府境の丘陵地帯を越えた後に急発達する。次々と発生して記録的な豪雨をもたらす場合もあり、過去に起きた南山城水害(1953年8月14~16日)や府南部豪雨(2012年8月13~14日)の原因とも推測されるが、詳しい発生条件などは未解明という。

 京都市では、夏の積乱雲を発生地域にちなんで「丹波太郎」「山城次郎」「比叡三郎」と呼ぶ。同部は05年、伏見区付近で発達する新しい積乱雲を確認し、「桃山四郎」と命名。今回、続く形で田辺五郎と名付けたという。

 同部の1、2年4人でつくる気象班4人は、今年5月に田辺五郎の研究をスタートさせた。気象庁が公開する過去の天気図やレーダー、風向風速、目視による観測などを通し、どんな条件で発生したかを調査している。また、京都盆地の大型立体地形図を製作し、ドライアイスを使って気流の動向を再現する実験も進行中だ。

 今年、田辺五郎は5~7月に複数回出現した。観測の結果、大阪から積乱雲を運ぶ南西風と、奈良方面からの南風などが京田辺市付近で収束した際、渦巻くような上昇気流が起こり、田辺五郎が発達することなどが分かってきたという。

 気象予報士を目指す班長の楠本壮一朗さん(17)は「田辺五郎は京田辺市付近で発達することが最も多いけど、南の木津川市付近でも似た現象が起こるなど、複数のパターンが分かってきた。内陸の地形や風向の影響が考えられ、さらに詳しい発生条件を解明していきたい」としている。

 阪本教諭は「ローカルな気象は分かっていないことも多い。過去、地域に大きな水害をもたらした現象を、高校生の力で検証してほしい」と期待する。気象班は今秋、「田辺五郎」についての論文にまとめる予定という。