外国人の就労を拡大する改正入管難民法が施行された。政府は移民政策ではないというが、現実には外国人と共生する社会へと、政策のかじを切ったといえる。

 しかし、それにしては多くの課題を積み残し、準備も整わないうちの見切り発車だ。日本に来て働き、隣人となる外国人の権利は守られるのか、懸念が先立つ。

 将来にわたる労働人口の減少を見据え、経済界から強い要請が出ている。一方で移民を認めない保守派の意向も無視できない。そのはざまで政府の姿勢が定まらずに、制度は生煮え、急ごしらえの感を拭えない。

 一体どれだけ外国人労働者に目が向けられたのか。

 新しく在留資格の「特定技能1号」「同2号」を設けている。このうち家族の帯同を認めるのは、熟練技能が必要な「2号」の建設など2種類だけ。生活者として当然の権利を制限するのは人権上問題ではないか。見直すべきだ。

 「1号」は外食業や農業、自動車整備など14種類で、日本語基礎テストや一部の職種で技能試験がある。政府は5年間で最大約34万5千人の受け入れを見込む。これには、32万人超に上る技能実習生の移行が計算されているようだ。

 しかし、その前に解決すべき問題があろう。日本の国際貢献として始まった技能実習生制度だが、長時間、低賃金、暴力など劣悪な労働環境下で働かせられる実習生は少なくない。昨年中に9千人以上が失踪しており、過去最多だ。

 法改正に伴う新指針で、最低賃金以上・基本給・割増賃金の支払い順守や、多額借金をさせる悪質仲介業者の対策強化などが打ち出されている。

 確かに多くの対策は用意されたが、実際の監視態勢は整っていない。運用の詳細を定めた政省令の公布、運用要領の公表は先月中旬になってからで、自治体や企業の準備は遅れている。一元的相談窓口も目標100カ所に遠く届かない。ハローワークの外国人労働専門官増員にしても、外国人急増に追いつかないのが現状だ。

 外国人労働者は昨年10月時点で146万人、この10年間で3倍だ。しかし、理念や政策の不在で、外国人の子どもたちの未就学など深刻な事態が生じている。

 外国人が暮らすまちの自治体、NPOに対応を委ねてきたが、それには限界がある。もっと政府が前面に出るべきだ。腰を据え、外国人を隣人とする多様な社会に向けて、取り組む時であろう。