新型コロナを巡る世界の状況

新型コロナを巡る世界の状況

 新型コロナウイルス流行収束の切り札とされてきた集団免疫の獲得が各国で絶望視され始めている。ワクチンの接種回数は世界で累計50億回に上るが、獲得の目安とされる人口の70%の投与を終えた接種先進国でも、感染力の強い変異株「デルタ株」のまん延で感染が拡大。時間の経過に伴いワクチンの効果が下がるとして3回目接種を決めた国もあり、対策は「いたちごっこ」状態だ。

 「集団免疫は獲得できない。活動を再開するにつれ感染者も多くなると覚悟するべきだ」。新型コロナと共存しながら社会と経済を回す方針のシンガポールは、人口の約78%が接種完了。19日の記者会見で、財務相が国民に理解を求めた。

 厳しい行動制限で感染を抑えてきたが、デルタ株の猛威により7月中旬から感染が再拡大した。保健省は外出先での3人以上の集まりを禁じ、未接種者には外出を控えるよう勧告。感染者が減り、8月10日から接種完了者に限って集まりの上限を5人に緩め、飲食店の屋内利用を解禁した。

 「接種者優遇」に踏み切った背景には、投与すれば感染しても重症化しにくいことが挙げられるが、財務相は「踏み石を探りながら川を渡るようなもの」と対策の難しさをにじませた。

 集団免疫獲得のハードルは上がる一方だ。米感染症学会は3日、デルタ株の感染力が従来株の倍近くあるため「獲得の目安は接種率80%を優に超え、恐らく90%近い」との分析を公表した。全米で最も優れた病院の一つとされるメイヨークリニックの研究班は「変異株の出現と接種率向上のいたちごっこで、95%でも無理だ」。

 約80%のマルタと約75%のアイスランドも、7月に入り感染者が増加。投与後に感染する「ブレークスルー感染」が広がり、アイスランド保健当局者はロイター通信に「感染者の77%は接種者」と語った。

 こうした事態に米ファイザーとモデルナは3回目接種「ブースター」の推奨を始めた。今月1日開始のイスラエルを皮切りに、チリも実施。米国は9月20日以降、両社製の2回目投与から8カ月たった18歳以上に投与する。

 日本はブースターの必要性を検討するが、2回接種した人の割合は約40%にとどまる。政府の対策分科会の尾身茂会長は「仮に国民の70%が接種をしたとしても、恐らく残りの30%の人が守られない」と述べ、集団免疫は困難との認識を示す。

 接種需要が増える一方で、アフリカの投与完了率は平均約2%しかない。世界保健機関(WHO)はこのままでは流行が長引き危険な変異株が出現すると警告。テドロス事務局長は「ワクチン格差は人類の恥だ」と批判した。(共同)