洋風の近代建築が並ぶ三条通。無電柱化する計画は中断された(京都市中京区・三条通)

洋風の近代建築が並ぶ三条通。無電柱化する計画は中断された(京都市中京区・三条通)

無電柱化事業が完了した先斗町。人通りはまばらだが、「コロナ後の集客の鍵」と神戸さんは先を見据える(京都市中京区・先斗町)

無電柱化事業が完了した先斗町。人通りはまばらだが、「コロナ後の集客の鍵」と神戸さんは先を見据える(京都市中京区・先斗町)

 京都市が都市景観の保全、再生のために実施してきた観光地の無電柱化事業の中断を決めた。財政難で本年度から3年間、予算化を見送る方針を決め、「景観より防災を優先せざるを得ない」(市財政室)のが理由だ。事業化を心待ちにしていた地域からは複雑な声が聞かれる。

 洋風の近代建築物が並ぶ中京区の三条通(寺町―新町間)。住民らは「京の三条通まちづくり協議会」を1995年に設立、無電柱化を要望し、19年度に1500万円が初めて予算化された。27年度完成に向け、期待が高まっていた中だけに、協議会長の森本浩行さん(59)は「ようやくだったのに。人命優先と言われたら仕方ない」と声を落とす。

 市は、観光地を中心とした景観保全目的の無電柱化事業を1995年から始め、ねねの道(東山区)や花見小路通(同)など35路線(総延長計9・62キロ)で完成した。広い青空の下、観光客は歴史的建造物を眺めながら街路を歩くことができるようになった。市は2018年策定の計画で、今後約10年間でさらに24路線(約10キロ)で整備する予定だった。

 しかし、財政破たんの恐れがある市財政で、税投入する余裕はなくなった。市によると、幅が狭い観光地の道路は1キロ当たり約9億円かかり、20年度までにつぎ込んだ事業費は約86億円。国の補助金などを差し引いた市負担は33億円を超えた。

 このため、市は本年度から観光地への予算化を見送った。対象は三条通(960メートル)のほか、銀閣寺道参道部分(左京区・200メートル)▽茶わん坂(東山区・400メートル)▽八坂通(同・460メートル)▽新橋通(同・200メートル)の計5路線。

 一方、緊急自動車の通行路になる幹線道路の無電柱化には8億2千万円を計上した。観光向けの事業費を削減することで、命に直結する防災の財源を確保する形となった。市財政室は「財政が逼迫(ひっぱく)する中、市民を守る防災減災を重視し、線引きせざるを得なかった」と説明する。

    ◇    

 7月末に電柱がすべて撤去された先斗町(中京区)。8月26日に訪れると、かつてクモの糸のように張り巡らされていた電線は消え、空の広さが際立っていた。全長490メートルを6年かけて整備し、総事業費は12億円を超える見通しだ。

 ただ、風情が増した地域は新型コロナウイルス感染拡大で、通行人はまばら。先斗町まちづくり協議会事務局長の神戸啓さん(44)は「今は我慢の時。この景観がコロナ後の集客の鍵になる」と、先を見据える。

 京都の経済をけん引してきた観光は、コロナ禍で「不要不急」とされ、インバウンド(訪日観光客)も消失。長年の看板施策だった無電柱化も、財政難で「不要不急」と判断された。3年間の中断後、事業は再開されるのか。市財政室担当者は「その時の財政状況次第」と、明言しなかった。

 無電柱化事業 景観保全が必要な観光地を中心とした道路と、災害時に緊急輸送路となるなど防災目的の道路の二つの事業がある。電線を地中に埋め、電柱を撤去する工事を行い、京都市によると、1キロ当たり7~9億円の費用がかかる。国土交通省は5月、防災目的の道路を重点に、全国約4千キロで推進する計画を策定した。