新型コロナウイルスのワクチン接種の信頼性に関わる事態だ。

 厚生労働省はおととい、接種会場で米モデルナ製ワクチンの瓶から異物が見つかったと発表した。

 同じ製造ラインで作られた計163万回分のワクチンの使用を見合わせるよう要請したが、対象のワクチンは全国に配布され、京都や滋賀などですでに接種済みだった。

 厚労省は「安全性の問題は確認されていない」というが、異物の分析や混入した原因究明が急がれる。国民の不安を払拭(ふっしょく)するため、リスクに関する確かな情報発信が必要だ。

 問題のワクチンはスペインの工場で作られた。異物は「黒い小さな物質」で、金属片の可能性もあるとみられるが、特定に至っていない。

 モデルナ製は、自治体の集団接種や企業などの職域接種で使われている。厚労省は当該のワクチンが全国863カ所に納入されたとするが、具体的な場所は「整理中で、とりまとめができていない」として明らかにしていない。これでは疑念は増すばかりだ。

 河野太郎行政改革担当相はきのう、使用を見合わせるとしたワクチンのうち「50万回強は接種済みと把握している」と述べた。約3分の1が使われた計算になる。

 京都府の発表では、今月21、22両日、府立京都スタジアムで922人に使用された。滋賀県も19~25日に県立大で2660人に接種した。いずれも目視で確認し、混入の可能性は低いとしているが、接種を受けた人の不安には丁寧に応えてほしい。

 対応の遅れも見過ごせない。

 異物混入は16日以降、5都県8カ所の接種会場で使用する前に見つかった。混入の情報を得てから使用停止の判断をするまで、厚労省や、販売・流通を担う武田薬品工業はもっと早く対応できなかったのか。結果的に異物混入の可能性があるワクチンの使用が広まってしまった。

 各地では接種が急きょ中止になり、混乱が広がっている。スケジュールが滞らないよう、安全性を確認した代替品を速やかに供給する必要がある。

 感染拡大が収まらない中、政府はワクチン接種を対策の切り札としているが、受けるかどうかは任意だ。「副作用が心配」などと不信感を抱く人もいる。

 今回の事態でワクチンそのものへの不信を広げないためには、迅速で正確な情報開示と十分な説明が求められる。