花粉症患者が全国で増えた背景には、戦後の国の復興政策が深く関わる=森林総合研究所提供

花粉症患者が全国で増えた背景には、戦後の国の復興政策が深く関わる=森林総合研究所提供

京都府が栽培を進めている花粉症対策のスギの苗木(福知山市夜久野町・府緑化センター)

京都府が栽培を進めている花粉症対策のスギの苗木(福知山市夜久野町・府緑化センター)

 春になると大量に舞う、スギ花粉。国と都道府県は連携し、花粉の飛散量が少ないスギの品種を開発して植え替えを促し、花粉症の対策を進める。滋賀県をはじめ近隣県で導入が進む中、京都府もようやく重い腰を上げ始めた。ただ、植え替えがスムーズに進むかは、これまでに植えられたスギの木材利用の促進が鍵を握る。

■花粉飛散量は1%以下

 JR福知山駅からワンマン電車で約30分。福知山市夜久野町にある府緑化センター内の採種園では、花粉飛散量を通常の1パーセント以下に抑えた、石川、鳥取県産の少花粉スギ4種類の苗が植わる。2年前から栽培し、来年秋には種が採れ始める。苗木に育てた後、早ければ2023年秋以降に府内の山主や森林組合を通じて山に植える予定だ。

 ただ、この少花粉スギが植林されても、実際に花粉が飛び始めるのは約30年後。同センターの小川享主任研究員も「効果が分かるには長い時間が掛かる」と認める。

■花粉症増加、背景に戦後復興

 花粉症患者が全国で増えた背景には、戦後の国の復興政策が深く関わる。物資不足から資材や燃料として木の伐採が進み、森林が荒廃した。高度経済成長期に入り、露出した山肌を手当てする形で、成長の速いスギが植林された。府内では森林面積34万ヘクタールのうちスギの人工林が6万ヘクタールを占める。

 住宅建材などとして経済の発展に貢献する―。当初はそんな期待が込められたスギだが、1964年の木材輸入の全面自由化を機に、価格の安い外国産木材に取って代わられた。伐採されずに残ったスギは一転、大量の花粉をまき散らす、迷惑な存在になった。

 現在、林野庁が対策の切り札として進めるのが、少花粉や無花粉の品種への植え替えだ。滋賀県は甲賀市の採種園で08年度から、県オリジナル「蒲生1号」などを掛け合わせ、少花粉の種の供給体制を整備。17年度には県内産の苗木全てが少花粉に切り替わった。

■木材利用、どう促進するか

 一方、京都府でも夜久野町で自主生産の体制づくりは始まったものの、今後、植え替えが進むかどうかは、既存のスギを伐採するために、木材利用をどれだけ図れるかに掛かっている。

 スギをはじめとする府内産木材の生産量と林業労働者数は、75年度は28万5千立方メートル、2847人だったが、17年度は14万4千立方メートル、434人に激減。府は利用促進のため公共施設の増改築などに地元産木材を使うほか、住宅や商業施設、幼稚園などの木造化に補助金を出している。さらに4月からは、管理できない森林を意欲のある経営者に集約する「森林バンク制度」が始まり、林業の大規模化の足がかりとして期待が掛かる。

 花粉症の対策は、治療や医薬品などの面では研究・普及が進む一方で、花粉の飛散量を減らさなければ元を断ち切れない。植え替えは息の長い取り組みだが、衰退した林業を立て直して、伐採と植林のサイクルを活発化させることが、花粉症から逃れる近道ともいえそうだ。