土壇場の決断で、遅きに失したといわざるをえない。

 2020年度からの大学入学共通テストで予定していた英語の民間検定試験の導入を見送ると、萩生田光一文部科学相が表明した。

 受験生の居住地域や経済状況による格差への対応策が間に合わないというのが理由だ。仕組みを抜本的に見直し、24年度をめどに新形式の導入を検討するとした。

 受験格差への懸念は教育現場で当初から指摘されてきた。くしくも萩生田氏の「身の丈に合わせて頑張って」との発言が構造的な問題性を浮き彫りにし、世論の反発から無理を押し通せなくなったということだろう。

 開始まで5カ月に迫り、受験用IDの申し込みが始まった当日の急転換だ。準備してきた受験生の動揺、戸惑いは測り知れない。

 拙速に導入へ突き進み、受験生らを振り回した文科省の責任は極めて重大だ。猛省を求めたい。

 民間試験の導入は、中教審の大学入試改革案を受け、英語の「読む・聞く・書く・話す」の4技能を測る目的で17年7月に実施方針が示された。従来の「一発勝負」の弊害もなくすとし、改革の目玉とされた。

 目指す方向性は理解できるが、問題は受験機会の公平さを担保できていないことだ。

 参加する民間6団体7種類の試験のうち、全都道府県に試験会場を設けるのは英検とGTECのみで、他は都市部が主体だ。受験料は安くて5千円台、2万円を超える試験も多い。会場に遠い地方の受験生は交通費や宿泊費もかさみ、より負担が大きい。
 文科省は、離島の生徒に限り補助する方針を打ち出したが十分とはいえず、全国高等学校長協会が導入延期を要請していた。
 制度設計の甘さに加え、文科省の実施準備や課題対応の遅さ、鈍さも見過ごせない。

 試験団体との調整の遅れから参加協定がそろったのは9月中旬。全試験の日程や場所が示されないまま一部の試験は受験予約が始まり、受験生たちを困惑させた。

 大学側も受験や評価の公平性への懸念から、出願資格や試験の加点などでの活用は7割にとどまる。当事者たちの不安を積み残したままだったのは否めない。

 萩生田氏は、今後1年間をめどに民間試験導入の是非を含めて再検討するとした。受験生たちの公平、公正な扱いを第一に、どんな環境にあっても安心して臨める丁寧な仕組み作りが求められる。