新名神高速道路の全線開通に向けて橋脚が次々と建設されている市街地(京都府城陽市富野・産業会館から東を望む)

新名神高速道路の全線開通に向けて橋脚が次々と建設されている市街地(京都府城陽市富野・産業会館から東を望む)

 神戸まで約65分、名古屋まで約100分-。京都府城陽市の発行する産業紹介誌には、2023年度に新名神高速道路が全線開通した際の地元の利便性向上を強調する文言が並ぶ。

■新名神開通で利便性向上、進む企業集積

 「新名神が完成すれば、府外からの家族連れが増えるはず」。2年前に同市寺田でグランドオープンした市総合運動公園のレクリエーションゾーン「LOGOS LAND(ロゴスランド)」の山形昭生マネジャーは期待を込めてそう話す。

 市中央部を横断する新名神は、企業の集積を可能にするなど、まちにかつてない変化をもたらしている。

 市東部を走る国道307号バイパスの両脇では約12ヘクタールの産業拠点が整備され、酒類卸売業者や流通業者などが入り、約20区画が埋まった。城陽IC(インターチェンジ)付近の国道24号沿いには京都郵便局や運送会社など約30社が集積する新市街地が広がる。

■開発で変わる農業環境、災害リスクも懸念

 だが開発には負の面もある。国道24号の進出企業に挟まれた畑で市特産の寺田イモを育てる田畑直幸(70)さん=同市寺田=は「砂地でイモを育てるいい場所だったが、大型トラックが多く走るようになり、雰囲気はがらっと変わった」。国道24号が拡幅され新名神の側道となる計画道路の建設も進む。「高齢化も相まって畑を手放す人が多い。開発の波にも乗れないし、仕方ない」とあきらめ顔だ。

 新名神開通に伴う変化を最も象徴するのがルート上に位置する、山砂利採取場を含む広大な東部丘陵地(約420ヘクタール)の開発。城陽スマートIC(仮称)の整備が決まり、24年春には府内初のアウトレットモールが開業、物流拠点もできる。

 「開発で税収が上がると言うが、メリットがどこまであるのか」。東部丘陵地の在り方について長年、問題提起する亀井成美さん(74)=同=は疑問を投げ掛ける。

 亀井さんによると、丘陵地に降った雨は土壌にしみ込んだり、ため池に流れ込んだりしていた。開発でコンクリート化が進めば雨はより下流に流れる。8月中旬の大雨を例に、「業者は調整池を設けるというが、かつてない大雨が各地で降っている。災害が起きないよう市は対応を真剣に考えるべき」。

 アウトレットの完成に伴い新たな交通渋滞も予想され、市民生活に影響が出る可能性がある。22年度には交通対策について本格的な検討が始まり、住民向けの説明会もあるが、「遅くないか」との声も上がる。

 亀井さんは「開発が住民の命や生活を脅かすようなら本末転倒だ」と指摘する。次の4年を担う市長には、開発に伴う市民生活の影響を極力小さくする具体策や、その過程を丁寧に説明することが求められる。

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 任期満了に伴う城陽市長選が、9月5日に告示(同12日投開票)された。新名神高速道路の全線開通に向けた工事をはじめ、市内で大型事業が次々と進むが、市民にとって住みよいまちになるのか。急速に変わりゆく城陽市の在り方を探る。