意外な展開に驚いた。

 日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(65)が東京地検特捜部に再逮捕された。今度は中東オマーンの販売代理店に支出された日産の資金を流用したという会社法違反(特別背任)の疑いだ。

 4度目の逮捕である。

 およそ1カ月前に保釈された身で、証拠隠滅などがないよう厳しい条件が付いていた。なぜ再逮捕が必要なのか。

 長期の身柄拘束で追い詰め、自供を引き出そうとする「人質司法」への批判が、国内外で高まっている中で、疑問は膨らむ。

 特捜部が着手した事件で、保釈された被告を再逮捕するのは異例という。注目される捜査だけに、特捜部には納得できる説明が求められよう。

 新たに出てきた疑惑を捜査し、真相を解明するのは当然だ。今回はゴーン容疑者が日産の子会社からオマーンの代理店に、3回にわたり支出させた資金のうち計500万ドル(約5億6300万円)を、自身が実質的に保有する預金口座に送金させて、日産に損害を与えた疑いだ。

 この資金は容疑者の家族が関係する会社に渡り、クルーザーの購入にも充てられていたという疑惑も浮上している。

 これまで特捜部は、容疑者が報酬額を少なく偽装したり、私的投資の損失を日産に付け替えたりした疑いで起訴している。ゴーン容疑者による「会社私物化」の立証への執念がうかがえよう。

 そうであっても、これまでのような長期勾留して追及するやり方は、もはや支持を得られまい。

 容疑者を保釈のままで取り調べることはできないのか。

 疑惑を否認し、無罪を主張する姿勢は固く、供述を変えるとは考えにくい。携帯電話の使用制限やカメラ監視などの下で、証拠隠滅をはかるのは難しいはずだ。

 再逮捕しなくても、容疑を裏付ける証拠や証言を得るようにすればいいではないか。そうした疑問が浮かぶ。

 ゴーン容疑者がツイッターで、来週11日に記者会見を開くと公表した矢先だった。弁護団も特捜部の捜査を批判しており、公判前から対決姿勢を示している。特捜部が対抗したというのは、うがった見方だろうか。

 事件は新たな局面を迎えた。世界に名をはせた元経営トップの疑惑の解明と同時に、日本の司法のあり方も問われている。これからの勾留をめぐり、裁判所がどんな判断を示すのか。注視したい。