撤回するだけでは済まないのではないか。塚田一郎国土交通副大臣の「忖度(そんたく)」発言である。

 福岡県知事選の応援演説で、安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の地元同士を結ぶ道路整備の国による直轄調査への移行について、「私が忖度した」と語った。

 塚田氏は、道路事業の採択や遂行を所管する省庁の副大臣だ。恣意(しい)的に便宜を図ったと受け取られても仕方ない発言である。

 「安倍1強」のおごり体質が、首相側近の官僚だけでなく、政治家にも及んでいるのは深刻だ。

 塚田氏は演説で「首相や副総理が言えないので、私が忖度した」と述べた。自民党幹部から首相と麻生氏の地元を結ぶ事業であることを指摘され、「私は物わかりがいい。分かりましたと応じた」などと発言した。

 野党などの批判を受け、塚田氏は一連の発言を「事実と異なる」として撤回し、謝罪した。

 しかし、何が事実と異なるとしているのかは分かりにくい。

 首相らの意向を忖度して便宜を図ったとすれば、あからさまな利益誘導だ。公共事業への信頼性を著しく損なうことになる。

 一方、忖度した事実がないというなら、選挙応援の演説で聴衆を欺いていたことになる。

 塚田氏は自民党麻生派に所属し、知事選に麻生氏が擁立した候補が劣勢とされる中での焦りが背景にあったともいわれる。

 選挙戦での発言とはいえ、所管する事業を自分の裁量で左右できるかのように言うのは、政策を私物化していることにならないか。

 政治家としての資質が問われている。このまま副大臣を続けても職責を果たせるとは思えない。

 だが、安倍氏は発言を「問題がある」と認めながらも、野党からの罷免要求を拒否している。このまま沈静化を待つつもりなのか。

 安倍政権で起きた森友・加計問題では、首相側近の官僚が安倍氏らの意向を推し量って特別の計らいをしたかのような疑惑が持たれている。背景には、安倍氏周辺からの声には従っておいたほうが無難、との空気が行政の内部に満ちている状況があるのではないか。

 塚田氏の発言も、首相らの名前を出すことで行政を支配しているかのように見せようとの思い込みがあったようにみえる。

 有権者の負託を受けた国会議員でありながら、権力者におもねるような発言をして恥じない姿は、異論さえ聞こえてこない現在の自民党を象徴しているようだ。