東京五輪のマラソンと競歩が暑さを避けるため、札幌市で開催されることが決まった。開催都市以外で五輪マラソンが実施されるのは初めてという。

 選手の健康面を第一に考えると、開催地の変更はやむを得ないだろう。だが言うまでもなく、暑さは大会招致の当初から懸念されていた問題だ。

 なぜ開幕まで9カ月を切った段階でこんな事態になったのか。今回の問題が問うているのは、五輪の在り方そのものだと多くの人が思うはずだ。

 国際オリンピック委員会(IOC)と東京都などは「開催都市契約」を結んでいる。問題に対する最終的な決定権はIOCにある。

 札幌開催の方針に、東京都の小池百合子知事は強く反発したが、都の合意がなくても押し通すことは最初から可能だったのではないか。

 とはいえIOCの強権的なやり方に、反発が高まるのは必至だ。それでなくても開催に伴う負担の大きさなどから、立候補都市は激減している。

 2024年のパリ大会、28年のロサンゼルス大会でも暑さは問題になりそうだ。

 五輪は曲がり角を迎えている。持続可能な大会にするためには、抜本的に見直す段階に来ているといえよう。少なくとも開催時期に無理があることは誰の目にも明らかだ。

 今回の問題は「選手ファースト」を理由に決着したが、最初から夏の開催を避ければ済む話だった。

 巨額の放送権料を払う米テレビ局に配慮し、人気競技のシーズンと重ならないようにするためにIOCが7、8月開催を求めているという。

 「ビジネス五輪」のモデルケースとして、五輪の歴史を変えたと言われるのは1984年のロサンゼルス大会である。96年のアトランタ大会で商業化がさらに加速した。

 IOCの収入源の47%は放送権料が占めている。NBCユニバーサルは2032年夏五輪までの6大会の米国向け放送権を一括して76億5千万ドル(約7800億円)で獲得している。

 日本初開催のラグビーW杯が新鮮な感動と大きな成果をもたらしただけに、五輪のゆがみがより目に付くようだ。今回の問題が、大会を見直すきっかけになってほしい。

 札幌開催が決まっても課題は山積している。

 費用負担の在り方や軽減策はもちろん、コース設定や警備をどうするか、選手・関係者の宿泊先確保や販売済み観戦チケットの扱いなど、相当な困難が予想される。

 ボランティアも一から確保する必要があるのではないか。札幌の暑さも侮れない。本番までわずかな時間しか残されていない。

 マラソンと競歩以外にも、暑さが懸念される競技は少なくない。開始時間の前倒しなど引き続き対策が求められる。

 IOC、大会組織委員会をはじめ関係者はこれまで以上に連携を密にし、負担軽減などに知恵を絞るべきだ。大会の成功に向けて全力を尽くさなくてはならない。