デジタル社会づくりの司令塔となるデジタル庁が発足した。

 国や地方の情報システムを標準化し、行政の効率化と情報の利活用を進めるのが狙いだ。

 日本の取り組みは先進各国に比べて遅れており、新型コロナウイルス対策給付金のオンライン申請などでトラブルが続出した。感染対策のアプリも機能せずに放置されていた。

 こうした状況の改善が求められよう。

 だが、デジタル化にはプライバシー侵害への懸念も根強い。サイバー攻撃などによる情報漏えいも相次ぐ中、個人情報保護で国民の信頼を得られるかが成否の鍵を握ることになろう。

 デジタル庁の設置は菅義偉首相の看板政策で、「役所に行かなくても、あらゆる手続きができる社会の実現を目指す」として約1年で実現させた。

 職員約600人のうち3分の1はIT企業社員ら民間出身者を採用した。行政の前例主義や省庁間の縦割りの打破が期待される一方で、出身企業への便宜供与が行われないかとの心配もある。入札などルールの整備が必要だ。

 大きな使命とされているのが、各省庁や自治体間で異なる情報システムの集約だ。

 2025年度までに、住民基本台帳など17のシステムを標準化し、各自治体がインターネットのクラウド上で使えるようにする。制度変更のたびに独自に更新する必要がなくなり、業務の効率化やコスト削減につながるという。

 情報の共有やビジネス、研究面での利活用が容易になる半面、負の側面も浮かび上がっている。

 デジタル庁創設に合わせた個人情報保護法の改正で、国や自治体で異なっていた情報保護のルールが統一される。条例などで厳格な運用を定めてきた自治体にとって後退となるケースもありそうだ。

 デジタル改革は国民の生活面にも及ぶ。政府はマイナンバーカードの普及を図るため、健康保険証や運転免許証の機能も持たせることを検討している。なし崩し的な利用領域の拡大や個人情報流出の不安から普及率が約4割にとどまっている状況を踏まえ、具体的なプライバシー保護策を示すべきだ。

 総務省は、デジタル機器の扱いが不得手で支援を必要とする60歳以上が1千万人以上と推計している。ワクチン接種のオンライン申請でも、戸惑う人が多かった。デジタル弱者が取り残されることがないよう配慮が欠かせない。