多くの派閥に担がれた現職が去るので、重しが取れたのか。

 菅義偉首相(自民党総裁)が先週、退陣の意向を表明すると、17日告示、29日投開票の党総裁選に向けて立候補を検討、模索する党国会議員が続々と現れた。

 新型コロナウイルスの収束が見通せない中、「権力闘争に明け暮れていいのか」と非難する声も上がっている。

 とはいえ、総裁選は事実上、新しい首相を決める選挙である。

 政権を担当した場合の政策や運営手法について、多くの候補が議論を交わすのは大変、意義深いといえる。

 選出に当たる党国会議員や党員・党友だけでなく、それ以外の国民も、議論の内容を吟味し、間近に迫った衆院選への対応を考えればよかろう。

 首相の退陣意向表明前、正式に立候補の意思を表したのは、岸田文雄前党政調会長だけである。高市早苗前総務相と野田聖子党幹事長代行は、総裁選への意欲を示していた。

 これに加えて、首相の表明後に「状況が変わった」として立候補の検討を開始、または再開した議員がいる。河野太郎行政改革担当相、石破茂元党幹事長、下村博文党政調会長らである。

 中には、党執行部の要職にあるため、一時は立候補の断念を明らかにしたり、コロナ禍にあっては総裁選より臨時国会を優先した方がよい、と唱えたりしていた人がいる。

 改めて検討した結果、立候補を決断するのなら、それぞれの方針転換について、きちんと説明する必要がありそうだ。

 いずれにしても、立候補する人は、その理由や所信を、正々堂々と語るべきだろう。

 総裁選は実質的に、すでに始まっているとされる。

 気になるのは、各派閥が誰を支援するかや、立候補を検討する議員が、その要件となる党国会議員の推薦人20人を集められるかどうかに、目が向きがちなことである。

 また、選挙区での地盤が強固でない若手議員らは、「選挙の顔」となりそうな人を、総裁に選びそうだという。

 これでは、総裁選で政策論争をする意味がなくなってしまう。

 共同通信社の全国緊急世論調査によると、次の首相に最も望まれているのは、自民党支持層、無党派層とも「国民への説明能力」とした。このことを、しっかりと胸に留めてもらいたい。