マンションの一室を模した「京あんしん子ども館」の設備。テレビや扇風機など、事故につながる可能性がある物を置き、予防法を伝えている(京都市中京区)

マンションの一室を模した「京あんしん子ども館」の設備。テレビや扇風機など、事故につながる可能性がある物を置き、予防法を伝えている(京都市中京区)

 「粒状の物は床に落とさないよう気を付けていたけど、まさかこんな物を飲み込むなんて…」。京都市左京区のウェブデザイン業の女性(32)は、長男が生後6カ月ほどだった約5年前の誤飲事故が今でも忘れられない。

 発生時、女性は台所で調理作業中だった。すぐ後ろで長男を遊ばせていると、せき込みや「かっ」とのどを鳴らす音が聞こえる。「何か飲み込んだかも」。驚いて背中をたたき、119番に通報。救急車を待ちながら救護を続けると、長男は輪ゴムを吐き出した。大事には至らず、病院搬送もせずに済んだ。

 輪ゴムをまとめた容器は引き出しにしまっていたが、何かを留めていた1本が落ちていたのに気付いていなかった。以来、これまで以上に床に落ちている物を意識するようになり、子どもが輪ゴムを触っていると「危ないよ」と呼び掛けるようになったという。

■子どもの死因、不慮の事故多く 

 子どもの死因の中で、交通事故や窒息など「不慮の事故」が占める割合は毎年、上位に入っている。厚生労働省の人口動態統計(2019年)によると、1~4歳では10・8%、5~9歳でも14・8%でともに2番目。同年には1~14歳の181人が命を落とし、事故の予防が課題となっている。

 子どもの事故予防に取り組む「京(みやこ)あんしんこども館」(中京区)の電話相談でも、事故に関する相談の内訳は05~20年度は毎年、誤飲が全体の約3~5割を占め、トップだった。

 同館にはマンションの一室を模したモデルルームがあり、子どもが事故に遭いやすい場所を伝えるほか、実際に子どもが飲み込んだボタン電池や硬貨、押しピンなども展示している。誤飲する物の大きさは、1~2歳児で直径32ミリ、3歳で39ミリが目安。大人の手の親指と人さし指でつくった輪やラップの芯に収まるかどうかでも判断できる。

 誤飲だけでなく、高所からの転落や風呂での溺水など、頭を悩ませ始めるときりがない家庭の対策。同館の中辻浩美看護師は「まずは子どもの手の届く範囲から」と助言する。

 「ねんね」の時期は布団の周り、はいはいをするようになれば座って届く高さ-と範囲を広げ、危ない物や不要な物がないか確かめていく。「わずらわしいことも多いが、永遠に我慢するものではない。対策に神経を削るくらいなら、生活に必須ではないインテリアなどは思い切って撤去するのも手です」

■救命措置、普段から学んで

 事故が起きた際に必要な救命措置を普段から学んでおくのも重要になる。市消防局の担当者によると、胸を1分間に100~120回の頻度で押す胸骨圧迫は、「体の3分の1程度が沈む強さ」で行う。子どもの体格や自身の力に応じ、2本指や片手、両手を使い分けることが大切。子どもの心肺停止は窒息が原因であることが多いため、人工呼吸も重要で、AED(自動体外式除細動器)も活用する。

 同局では乳幼児や新生児向けの救命講習を定期開催しており(緊急事態宣言期間中は休止)、万が一の時にすぐに動けるよう講習への参加を促す。

 そして、救護に何より重要なのは心構え。「緊急時は、目の前の事態を過小評価する『正常性バイアス』に陥りがち。子どもに意識がなく、呼吸がない状態であればすぐに措置を始めて」と訴える。

■思ってもいない危険、記者も苦い経験

 「まさかこんな物が」「なぜ、そんな行動を」。子どもの事故の取材を進め、他の保護者と話す中で、このような言葉を多く聞いた。大人が想像もしない行動や危険性を認識していない物が、思わぬ事態を招く。自身にも苦い経験がある。

 5歳の長男が風呂場で足を滑らせ、あごを打ち付けて切り傷を負った。洗面器の縁で切った可能性が高かったが、丸みを帯びた樹脂製の洗面器の縁が危ないとは、思ってもいなかった。
 「子どもの目の高さで、どんな物があるのかを見直してほしい」。京あんしんこども館の中辻看護師の言葉を胸に刻みたい。