新型コロナウイルス感染症の影響で、企業倒産が相次いでいる中、ラーメン事業からパン事業を新たに始めた企業が京都市にある。

 「めん馬鹿」(上京区)、「Ramen Factory(ラーメンファクトリー)」(東山区)を経営するジャパンフードエンターテイメント(上京区)は、コロナ禍で、顧客である外国人観光客の足が途絶えた。

 そんな中、同社が2020年10月31日にオープンしたのが、「KAMOGAWA BAKERY(カモガワベーカリー)」(上京区)である。

白色を基調とするKAMOGAWA BAKERY京都本店(京都市上京区・KAMOGAWA BAKERY京都本店)

 「インバウンドが8割くらいのラーメン屋を経営しています。コロナの影響で、そもそものターゲットカスタマー(顧客)が日本にいないということで、どうにもならないというところです」と代表取締役の宮澤心さんは語る。

 2020年の2、3月ごろから、外国人観光客の予約キャンセルが始まり、店の休業を余儀なくされたという。

 「ラーメン屋に限らず、ほとんどの飲食店が休業していく中で、居酒屋や定食屋は、お弁当などのテイクアウトに切り替えていました。その時、『ラーメン』という商材は、びっくりするほどテイクアウトに向いていなくて、『こんな危うい商材を使っていたのか』と痛感しました」と宮澤さん。

 テイクアウトできる商材を考えた時に、京都はパンの消費量が多くて、馴染(なじ)みのある商材と思っていたので、パン屋を始めることを決断した。

 2020年の7月ごろには、その方向性を決め、どういう商材を販売するのかを考える段階に行き着く。

 「京都は、個人で営業されているパン屋さんがすごく多いんです。あの価格で、町のパン屋さんとして参入しても、絶対勝つことはできないので、何かしらとんがりのあるパン屋じゃないと駄目だと考えていました」

 そう考えた宮澤さんは、「クロワッサンのパン屋をやろう」と社内会議で発言したのだが、宮澤さんの意見は尊重されず、話し合いの結果、商材はベーグルになったという。

 そして、この選択が吉と出た。

KAMOGAWA BAKERY北大路駅前店のミックスベリーベーグル(7月28日掲載)

 ベーグルの発祥については、ポーランドに移住したユダヤ人がつくったという説が有力。基本的に、卵、牛乳、バターを使わないパンなので、宮澤さんがラーメン屋を運営するにあたって実践してきたベジタリアンやビーガンへの食の対応が、ここで生かされることになった。

 「例えば、欧米の方が5人ぐらいで店に来られたとすると、グループの中で1人はベジタリアンなんです。1人がベジタリアンで食べるものがなかったら、全員が別のところに行ってしまうんです。そういった経験から、みんなが食べられるラーメンという、ベジタリアン対応のオプションをつくってきました。自分たちの出したいもので、みんなが同じテーブルを囲んで、同じものを食べられるという考えでやってきたので、パン屋もその方針でやりたいと思っていました」と熱く語る。

 実際に、パン屋を始めてみると、卵・乳アレルギー持ちで、それらが入っているパンを食べることができない客層に喜んでもらえたという。ベジタリアンやビーガンだけでなく、アレルギー持ちの方にとっても、誰かと一緒に同じものを食べられることは、当然のように幸せなことだろうと想像した。

 パン屋を始めると決めてから、3、4カ月間、老舗ホテルのベーカリー部門で働いていた人の監修を受け、試行錯誤を重ねてつくったベーグルは、もちもちとした食感で、食べていても飽きないくらいの、ほどよい大きさに仕上がった。

 本店が軌道に乗り、今年の2月に膳所店(大津市)、6月には、北大路駅前店(京都市北区)が誕生し、飛ぶ鳥を落とす勢いで、10月下旬には、堀川五条の辺りに4号店を予定している。

紅茶ベーグルをつくる製造スタッフ(京都市北区・KAMOGAWA BAKERY北大路駅前店)

 コロナ禍で、ラーメン事業は今でも休業状態が続いているが、ラーメン事業で培った考え方を生かし、KAMOGAWA BAKERYは躍進を続けている。

 テイクアウトで、同じものを一緒に食べられる幸せが詰まったベーグルは、今日も食卓を囲む人たちに笑顔を届けているのだろう。

 ☆「一日一パン」は、京都市を中心に、京都や滋賀のパン店をめぐり、毎日ひとつのパンを取り上げ、写真と記事で魅力を紹介する、「ライトプラン」以上の有料会員向け記事です。9月19日〜25日に公開される記事は、特別企画として無料でお読みいただけます。