2021年8月28日、京都市中京区錦小路通高倉上ルに誕生した「小麦処むく」。

 開店のきっかけには、新型コロナウイルスの影響と、若いころに飲食店でともに修業した代表・東崇貴(たかき)さんとパン職人・大西正芳(まさよし)さんの交流があった。

パンのラインナップを知らせるボードが置かれた店前(京都市中京区・小麦処むく前)

 東さんは、「和鉄板ぞろんぱ」(中京区)と「串鉄板ぞろんぱ」(下京区)という居酒屋を経営している。新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた昨年の春ごろ、いずれの店も客足が一気に遠のいた。

 「圧倒的に来客数が減少しました。タレントの志村けんさんが亡くなったのが、昨年の3月末だったんですけど、あのニュースから、世の中の空気が変わったのを感じました」と東さんは語る。

 さらに、酒と料理を合わせることをコンセプトとしていたので、緊急事態宣言で酒類の提供を自粛した期間は、休業せざるを得なくなった。

 「最初のころは、感染防止の観点から、緊急事態宣言が出ただけで休むようにしていました。しばらくして、お酒が出せる状況になってから店を開けていました」と振り返る。ちなみに現時点(2021年9月)でも、居酒屋2店舗の休業状態は続いている。

 「営業を再開したところで、来てくれはるのは馴染(なじ)みの常連さんくらい。昔とは、全然違うような環境でした。そういうことがあって、コロナなどに影響されない業態をやりたいと思っていたんです」と東さん。

 「テイクアウトは、そもそも、店の造りがそういう仕様になっていないので、傷口に絆創膏(ばんそうこう)を貼る感じにしかならないんです。つまり、利益を発生させるのがかなり難しいです。そこで、一からテイクアウトに特化した商売を考えました。いわゆる、デリや弁当屋。その中に、パン屋がありました」

 そんなことを考えていた今年1月、チャンスが訪れた。

 20年ほど前に同じ和食店で修業していた大西さんが、東さんの居酒屋を訪れたのだった。大西さんは、和食店を辞めてから、和歌山に移住。地元のパン屋で修業後、2011年に独立開業していた。

 大西さんが和歌山に移住した後も、東さんは交流を絶やさなかった。大西さんのつくるパンを称賛し、わざわざ和歌山から仕入れていたという。

 その大西さんが縁あって、京都に帰ってきた。

 「もしパン屋を京都でやるなら一緒にやろうか」。どちらからともなく話が盛り上がり、「タイミングあったらやろう」と意気投合。3月から新事業でパン屋の開業に向けた準備を始めることになった。

 ※<下>に続く。

店名:小麦処むく
住所:京都市中京区錦小路通高倉上ル中魚屋町508
営業時間:午前10時〜午後6時
定休日:不定休
電話番号:075(708)6808

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