児童虐待の緊急安全確認で厚生労働省と文部科学省は、児童相談所が在宅指導している3万7806人のうち、170人について一時保護など親と引き離す措置を取ったと公表した。

 千葉県野田市の小4女児死亡事件を受けて実施された。当初の児相の判断を一部見直したことになる。面会できず、継続対応が必要な子どもも相当数にのぼった。

 子どもや家庭の状況は刻々と変化しており、本来は柔軟に判断を見直すことが求められる。だが、いったん在宅指導と判断すれば、そのままになっている可能性が高いという。

 170人は放置していれば危ない状態になっていたとみられ、事態の深刻さがうかがえる。

 全国の小中学校や教育委員会では2週間欠席が続いた子どもの安否確認を行った。虐待の懸念があるとして児相などと情報共有したケースは1万件を超えた。

 虐待は特異な事案ではなく、どこにでも存在するということに向き合わなくてはならない。体制強化が急がれる。

 学校と児相の連携は大切だが、負担も大きくなっている。政府は児童福祉司の増員を決めたが、一人前になるには10年以上かかるとも言われ、即効性のある資質向上策をどう作るかが問われる。

 関係機関はもちろん、幅広い連携と支援は欠かせない。

 虐待を受ける子どもの意思を第三者がくみ取り関係機関などに伝える制度づくりを目指し、各地のNPO法人などが7月にも全国協議会を立ち上げる。

 「アドボケイト(代弁者)制度」といい、子どもの意見表明権を確立する取り組みだ。英国やカナダで既に導入されている。

 児相と親が対立関係になると、子どもが板挟みになり本音を言いづらくなる。子どもに寄り添う制度として期待され、ぜひ日本でも導入を進めてほしい。

 問題を抱えた親たちの背景にも理解を深めたい。理化学研究所の調査で、虐待事件で有罪となった親の約7割が自身も子ども時代に虐待を受けていたと分かった。

 本人が精神的問題を抱えるケースや、子どもに健康や発達の問題があり、子育てが難しい環境に置かれていた例も目立ったという。有効な支援策が求められる。

 児童虐待防止法・児童福祉法改正案が今国会で成立する見込みだが、法律だけで悲劇は防げない。さまざまな面から社会の連携の力を高めていきたい。