「店のコンセプトは、『おいしくて、かわいい』です」

 そう語るのは、フルーツサンド専門店 ももの樹(京都市中京区)の店長・鈴木遼(はるか)さん。

 鈴木さんの勤めるモンテステリースホールディングス(右京区)は、京都でお好み焼きを中心とした居酒屋「花たぬき」やバルを運営している。

 昨年の3月以降から、新型コロナウイルス感染症の影響を受け始めた企業の1つである。

 先行きが見えないコロナ禍で、今年2月6日に、フルーツサンド専門店をオープンした。

 居酒屋事業と並行し、フルーツサンドの新事業を展開した理由は何だったのだろうか。

木箱のようなかわいらしいデザインが施された店舗(京都市中京区・フルーツサンド専門店 ももの樹)

 「2020年の間に、コロナの影響で、5店舗を閉店せざるを得なくなりました。企業の宴会がなくなった影響や、インバウンドのお客様が年間の購買人口の10%を占めていたのが、大きかったです」と鈴木さんは振り返る。

 昨年は、「Go To Eat」キャンペーンの効果があり、一旦は客足が戻っていたが、それも長くは続かないと見込んで、社内でテイクアウトの計画が持ち上がった。

 そして、昨年の夏に、同じ居酒屋グループの経営者仲間が経営している大分県のフルーツサンド専門店に、社長が視察に行ったという。

 視察の成果に加え、「断面萌え」や「萌え断」という言葉とともにフルーツサンドがトレンドになっていたことから、フルーツサンド専門店という新しい事業を展開する形となった。

 そして11月には、商品の試作と店舗の施工が始まった。

 「ぼくらは、フルーツサンドに三つの要素があると考えています。フルーツとパンとクリームです。例えば、普通のパン屋だと、いろんなパンを焼くことができると思いますけど、そういう加工がフルーツサンドにはありません。基本的に、素材のレベルを徹底的に高めないとおいしくならないんです」と鈴木さんは語る。

 その言葉の通り、フルーツは木箱に入っているような贈答品レベルを使う。

 クリームは低脂肪分で、口当たりの軽いもの。このクリームの口当たりが重くなると、フルーツが引き立たなくなるので、バランスを大切にしている。

 そして、肝心のパンについては「サンドイッチにした時に、水分の抜けが少ないということを重要視しています。サンドイッチを初めてつくってみると、意外とパンがぱさぱさしたんです。一番乾燥していないのは何かと言うと、コンビニのサンドイッチですね。『特殊につくっているんだろうな』とか、『そこに企業努力があるんだろうな』と思いました。そういったことも踏まえて、いろいろとパンを探した時に、左京区の『アンジュール桃の木』のパンにたどり着きました」と言う。

 商品の仕入れができるか考慮しつつ、10軒以上のパン屋のパンを検討したようだ。それが、コンセプトの「おいしい、かわいい」の「おいしい」の部分に込める情熱だ。

それでは、「かわいい」の部分には、どういう思いが込められているのだろうか。

 鈴木さんは語る。

 「今、お客様がテイクアウトのフードを買われた時に、『写真を撮る』という行動があります。味の記憶って、なかなか人の記憶に残ることは、少ないんです。例えば、『3週間前の昼ご飯は、何を食べたましたか』と訊ねると、きっと覚えていないじゃないですか。でも、カメラロールに残るものは、ずっと残っていて、それを見返します。インスタグラムや、年齢関係なく、みんながこういう行動をとるようになっています。見た目がかわいらしくて、外食産業としてのプライドを持ち、おいしいものを提供するということを、両立していかないといけません」。

 現在、2つのコンセプトが詰まったフルーツサンドは、京都の店舗販売と並行し、大阪や福岡などの催事で人気を博している。1週間に3カ所の催事会場で販売しているので、実質、4店舗を展開している状況が続いている。オープンした2月に比べると、売り上げは5倍に達するという盛況ぶりだ。

 京都の店舗には、フルーツサンドを差し入れで買ったり、自分へのご褒美に買ったりする地元客や、近距離旅行でフルーツサンドを目当てに訪問する客がいるという。

 「ぼくらは接客だったり、箱にメッセージを書いて渡したりと、お客様に近い距離で接してきたので、居酒屋事業で培われてきたことが生かせているのかもしれません。今は、ものを買うだけでしたら、ネット販売があります。わざわざ来ていただいているのだから、接遇のレベルを保つことを大切にしています」と鈴木さんは、力を込めて語る。

フルーツサンド専門店 ももの樹のプレミアム完熟宮崎マンゴーサンド(5月18日掲載)

※期間限定商品で、今季の販売は終了しております

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