伊藤若冲と河鍋暁翠の人物像などについて語る澤田さん(京都市上京区・平安女学院大)

伊藤若冲と河鍋暁翠の人物像などについて語る澤田さん(京都市上京区・平安女学院大)

 天才絵師として名をはせた河鍋暁斎(きょうさい)の娘・とよ(暁翠(きょうすい))の人生を描いた長編小説「星落ちて、なお」で、第165回直木賞を受賞した作家の澤田瞳子さん=京都市在住=が18日、上京区の平安女学院大で講演した。暁翠と、別の作品で描いた江戸期の絵師伊藤若冲の2人の人物像や、両者の共通点などを論じた。

 代表作「動植綵絵(さいえ)」などを例に、若冲には細かい部分を精密に描き込んだ絵が多いことを解説。金と時間をかけて描いた同作品を相国寺に寄進したことから、「権力者に仕えず、市中の絵師として趣味で筆を執ったことが分かる」と評した。

 趣味人としての評価の一方、若冲が生家の青物問屋がある京都・錦小路の青物市場の存続に奔走したことが分かったとの近年の研究成果に触れ、「京の経済活動に携わった町衆としての若冲の姿が見えてくる」と述べた。

 幼少期に父の手ほどきを受けて絵師として育った暁翠については、教材として父から渡された絵を生涯、大切に保管したことや画風を引き合いに、「父の教えを守るまじめな人物だった」。暁翠は職業絵師としての意識も高く、日本が勝利した日清戦争の海戦を描いた絵や石けんの広告ポスターなどを手掛けたことを紹介した。

 若冲の弟子が大成しなかったことと、師である父の域に達することができなかった暁翠とを対比させ、「育った場所も時代も違うが『天才』というキーワードで見ると、同じ軸にいる人物という見方もできる」と語った。

 きょうと視覚文化振興財団(宇治市)と京都新聞が主催する本年度の連続講座シリーズの初回。講座は来年4月まで、計8回開かれる。