豪雨被害が全国各地で相次ぐ中、京都市伏見区小栗栖の大岩山(標高182メートル)で土砂崩れの危険が高まっている。3年前の西日本豪雨では山頂付近に運び込まれた建設残土が崩れ、産業廃棄物の混在した多量の土砂が住宅地の10メートル手前まで迫った。大雨が続いた今年8月にも新たな崩落が確認され、住民は「熱海の土砂災害は人ごとではない。行政はしっかりと対処してほしい」と訴えている。

大雨が続いた8月中旬、山肌が大きく崩れた大岩山の南側斜面。谷筋の先には住宅街が広がる(京都市伏見区)

■違法な建設残土搬入、京都市の監督行き届かず

 大岩山で最初の土砂崩れが起きたのは2018年7月。西日本豪雨で山頂付近の盛り土が約400メートルの距離で崩れ落ちた。谷筋や麓の農業用ため池が、コンクリート殻などが混じった大量の土砂で埋め尽くされた。ため池の約10メートル先には住宅や幼稚園があり、一歩間違えば大きな被害が出かねない状況だった。

大岩山の土砂崩れと住宅の位置関係

 崩落が起きた大岩山の山頂付近は元々、建設残土の受け入れ場所になっていた。土地管理者から開発業務を請け負う複数の土木会社が、宅地造成規制法に基づく許可などを得ないまま運び込んでいた。こうした実態を市や土地管理者は把握できていなかったという。

 市は17年7月以降、土木会社や土地管理者に対し、残土の搬入をやめ、盛り土の傾斜角を30度以下に抑えるよう指導した。それでも市の監督は行き届かず、土木会社による残土搬入は土砂崩落後の18年9月初旬まで続いた。市によると、山頂付近の元の地形が分からず、どれだけの残土が運び込まれたのかは分からないという。

■住民は全ての撤去を求めたが…

 住民側は市に対し、違法に運び込まれた残土などの全量撤去を土地所有者に指導するよう求めている。だが、市は「全量撤去しなくても安全確保できる」(市開発指導課)との考えで、土地所有者側から市に提出された是正工事計画にも残土などの撤去は盛り込まれなかった。

多量の建設残土が運び込まれた大岩山の山頂付近。コンクリート殻などの産廃が混在している様子も見て取れる(京都市伏見区)

 是正工事計画は、盛り土の傾斜角が安定勾配となるように成形▽雨水を流すための溝の設置▽雨水が一度に住宅地に流出しないようにする「洪水調整池」の設置▽種子の吹きつけによる斜面の緑化▽植林―の5項目。今年10月の完成を目指しており、全工程の7割が完了したという。

■8月の大雨で再び崩落も、京都市の態度は変わらず

 こうした中、大雨が降り続いた8月14日、山頂南側の盛り土が幅20メートル、高さ8メートルにわたって崩落しているのが見つかった。

 麓周辺で見回りを続ける男性(67)は「繰り返し土砂崩れを起こすほどの残土や産廃が、なぜ運び込まれてしまったのか。土地所有者や土地管理者だけでなく、京都市にもそれを見逃してきた責任がある」と批判する。

 一方、是正工事を監督する市開発指導課の山本篤史担当課長は「今回崩れたのは、是正工事の未着工部分だった。自然の形に戻すことが必ずしも安全というわけではない。現在の工事内容に問題はない」と話している。

■専門家「人命脅かすリスク残ったまま」

 京都大防災研究所・斜面災害研究センターの釜井俊孝教授の話 大岩山の土砂崩れは熱海市の災害と同様、盛り土の中に多量の雨水がたまり、土の強度が減少したのが原因と考えられる。崩落を予防するには、土の締め固め作業や、土中の水を排出する暗渠(あんきょ)などの整備が不可欠だ。
 だが、建設残土による盛土は再利用を前提にしたもので、後々の使い勝手を考慮して締め固めがなされないことが多い。多額の費用を要する排水設備も敬遠されるケースがほとんどだ。大岩山の麓で暮らす住民の安全を確保するには、違法に運び込まれた建設残土や産業廃棄物をすべて撤去するのが一番だ。それができなければ、人命を脅かすリスクは残されたままと言える。