新元号「令和」が発表されて、きのうで1週間がたった。

 発表直後の共同通信世論調査では、「好感が持てる」が73%、出典が日本古典の万葉集だったことも84%が「評価できる」とした。

 おおむね肯定的に受けとめられていることがうかがえる。

 しかし、選定過程について政府は口を閉ざしている。考案者は正式公表せず、「落選」した案も詳細は確認させない方針だという。

 元号の制定は元号法に基づき政府が責任を負うが、手続きの上では有識者や衆参両院の正副議長から意見を聴く。いわば国民も間接的に関わるかたちをとっている。

 ならば、決定過程を国民が検証できる仕組みが必要ではないか。

 新元号の決定、公表の直前に開かれた有識者懇談会には、令和を含めて六つの案が示されていたことが報道で明らかになった。

 このうちの一つ「万和(ばんな)」を考案した中国文学者の石川忠久さんは、出典や込めた思いなどを取材に語っている。考案者の証言は極めて異例だが、将来の元号選定の議論を豊かにする上で重要だ。

 有識者懇談会では、担当の官僚が、6案の中に人名などに使われているものを指摘したり、「歴史上初めてになる」として典拠となる日本古典を引き立てる発言をしたりしたことが分かっている。

 衆参の正副議長への聴取では、令和について「特定の季節を指すのはどうか」との違和感や、他の案を推す意見があったという。

 全閣僚会議でも複数の案を推す閣僚がいたが、最終的に安倍晋三首相の提案で令和が了承された。 政府が誘導した可能性が浮かび上がっている。ただ、こうした経緯を公にしたとしても、新元号の価値がゆらぐとは思えない。

 政府は有識者懇談会に示した数個の原案とその考案者、懇談会の議事などを記録した公文書を作成するという。だが、原案に絞り込んだ過程や絞り込む前の候補名とその考案者は残さない見通しだ。

 これでは選定のプロセスを検証することは難しい。改元の際にどのような議論があったのか、先例をふまえることもできなくなる。適切な情報開示を求めたい。

 政府は先月、平成改元時の公文書の保存期間を5年間延長した。今回の改元に支障が出るとの判断だったようだが、いったいどんな差し障りがあるというのだろう。

 天皇と深く関わる問題だから経緯を明らかにしなくてもよいとの発想が底流にあるなら、国民に親しまれる元号にはなり得まい。