中島岳志教授

中島岳志教授

自民総裁選立候補者らの立ち位置

自民総裁選立候補者らの立ち位置

 自民党総裁選の4候補者の政治志向や政策をどう比較したらいいのか。東京工業大の中島岳志教授(政治学)に▽自らと異なる思想信条を尊重するか、家父長主義的(パターナル)な考えを重視するか▽自己責任を重視するか、社会全体での支え合いを重視するか-といった観点で4候補の特徴を聞いた。


 -河野太郎行政改革担当相は新自由主義者だと指摘している。

 「コロナ禍なので財政出動とおっしゃっているが、基本的には小さな政府論者。市場に任せるべきだという小泉構造改革の延長上の人。自己責任が明確だ。思想的には、言っていることはリベラルだが、その手法は極めてパターナル。自分の考えで突っ切っていこうとする。安倍・菅政治が持つ国民への説明能力の無さを引き継いでしまう可能性がある。はっきりとしたビジョンは持っている」

 -岸田文雄前政調会長は立場が判然としない。

 「アベノミクスの修正を唱え、格差が広がったので配分に力を入れる点ではリスクを社会化していく傾向。全般的にリベラルな指向性を持っている。図の左上のゾーンに自らを位置づけようとしているが、強い人に巻かれやすい。総裁選でも対極にある安倍さんを気にしてブレている。リーダーとしては危うい。いろんな声に左右されすぎて、どこに向かおうとしているのかが分かりにくい」

 -高市早苗前総務相は著書で取り上げていなかったが、どうみているか。

 「安倍・菅に最も近い。選択的夫婦別姓には長年反対だし、先の戦争の認識も極めて右派的な主張をしており、価値観のパターナルがはっきりしている。リスクの問題も総裁選では財政出動などを主張しているが、過去の発言から総合的にみると、自立した個人がまずあるべきだという自助努力論が根底に強くある。リスクを取って何かをやった人が報われる世界、という言い方をしている」

 -多様性と包摂を野田聖子幹事長代行のキーワードに挙げている。
 
 「女性の地位向上に尽力してきた政治家で、価値観の問題に大きなこだわりがある。選択的夫婦別姓や性的少数者の権利など強いリベラルの傾向。リスクの問題も再配分を重視している。小泉構造改革には批判的だった。強い分野が引き立つ分、総合的な政策については幾分抜けている点があるのでは。あまり言及しない憲法や歴史認識の問題、外交・安全保障の考えが見えてくるといい」

 -野党の対応は。

 「自民党は右下の政党に傾斜している。上段は保守本流と呼ばれ、かつて分厚いボリュームがあったが、特に左上はどんどん減っている。野党は、このリベラルな価値観、再配分を重視するゾーンを軸に大きな方向性を提示するべきだ。かつて自民を支持していた穏健な保守層を取り込むようにしないといけない」

 なかじま・たけし 京都大大学院博士課程修了。北海道大准教授を経て現職。大阪府出身。著書に「自民党」、共著に「料理と利他」(ミシマ社)など多数。