新型コロナ対策で購入したが、1度も使っていないアクリル板の入った箱が積み重なる倉庫(2021年9月22日、京都市上京区の京料理店)

新型コロナ対策で購入したが、1度も使っていないアクリル板の入った箱が積み重なる倉庫(2021年9月22日、京都市上京区の京料理店)

 京都の飲食や観光の関係者が、首相の座を巡って争われている自民党総裁選(29日投開票)を期待と不満の目で見つめている。新型コロナウイルス禍が長期化し、繰り返される自粛要請や営業制限で地域経済は大きな打撃を受けた。事業者からは営業を続けるための環境整備を求める切実な声が上がっているほか、総裁選による政治空白への疑問の声も聞かれた。

 新品のアクリル板や二酸化炭素濃度を測るセンサーの入った箱が、店内奥の倉庫や戸棚に積み重なる。京都市上京区にある京料理店。コロナ対策で購入したが、客が激減してほとんど使う機会がない。

 「開店休業状態です」。若主人の男性(51)は話す。

 コロナ対策で政府は、会食を感染防止の「急所」と位置付けた。特に酒がやり玉に挙がり、提供の停止や時間制限など厳しい措置が取られてきた。

 この料理店では売り上げが2019年と比べて、昨年は7割減り、今年は8割減まで拡大する。京都府の協力金と雇用調整助成金でなんとか経営は維持できているが、若主人の男性は「どこまで持ちこたえられるか」と不安だ。また、店を支えてくれている市場や生花店などにはほとんど支援はなく、和食文化の将来を危ぶむ。

 安全な環境で京都の文化である食を楽しんでもらうため、男性も参加する料亭の有志が自ら動いた。今夏、100項目に及ぶ独自の衛生認証基準を発表した。専門家に意見を聞いて客室利用数の制限や換気の目安を設け、全国で最も厳格な基準といわれている。

 4人が争う総裁選は、コロナ対策が大きな争点の一つとなっている。若主人の男性は「これまでの政府の対策はエビデンス(科学的根拠)に基づいていたのか。業態や店舗の規模などで内容は違うはずで、政治にはジャンルごとの基準を作って後押しする政策をとってほしい」と話す。

 「コロナが観光に与えている影響は甚大。うちも既に倒産に近い状態です」。下京区で2棟のゲストハウスを経営する男性(44)はため息をもらす。

 日本を体感できることを売りに、訪日外国人をターゲットにした施設を運営してきた。だが渡航制限で海外からの客が激減したため、コロナ前と比べ収益は9割減となっている。

 総裁選については「そんな時間があるなら、ほかのことに力を使ってほしい。誰が総裁になっても変わらないのではないか」と冷めた見方だ。立候補している4人の議論を聞いても「今後の日本の経済をどのように考えているのか、はっきりと見えない」と感じる。

 現行の助成金などの支援だけでは資金繰りの改善は見込めず「このままでは次々と同業者が倒れていく。将来的にも、インバウンド(訪日観光客)は国の政策として重要なはず。(総裁選の候補者には)柔軟な支援の在り方を示してほしい」と訴える。