東京五輪・パラリンピックに向け工事が進むアクアティクスセンター。1万5千人分の座席を備える

東京五輪・パラリンピックに向け工事が進むアクアティクスセンター。1万5千人分の座席を備える

 東京五輪・パラリンピック開幕まで300日を切り、東京都内で「2020」の文字を見ない日はない。水準の高い東京の競技会場やトレーニング施設を目の当たりにし、多くのトップ選手が首都圏で活動する現状に触れるたびに、不安を感じる。スポーツ界も東京と地方の差が広がっていないか、と。

 「水泳会場となるアクアティクスセンターは世界最高水準のものとなります」。10月中旬、国内外のメディア向けに大会組織委員会が開いた競技会場の現地ツアーで担当者が説明した。来春の完成を目指し、都内臨海部で建設中の地上4階、地下1階、総座席1万5千人分を備えるプールは、これまでに見たことのない規模だ。

 日本代表の選手やチームの練習拠点となるナショナルトレーニングセンター(NTC)では9月、地上6階、地下1階の拡充棟(イースト)がオープンした。フェンシング場は車いすフェンシングを含め34ものピスト(試合場)がフロア一面につくられた。対戦の模様を撮影した動画を数秒遅れで映し出す装置もあり、同志社大OBの宇山賢選手(27)=三菱電機=は「確認しながら細かい練習ができる」と語る。

 バリアフリー化したNTCイーストは、パラリンピック競技で積極活用されている。今月1日に合宿を公開した車いすバスケットボール女子日本代表チームの柳本あまね選手(21)=同志社女大=は「食堂、お風呂、宿泊設備も館内に整い、すごく快適」と話す。施設利用は各競技団体で取り合いになっているという。

 選手を取り巻く環境は「バブル」と言える状況だ。東京に本社を置く有名企業が雇用したりスポンサーについたりし、レスリングやライフル射撃では自衛隊体育学校が多くの選手を抱える。報酬を得て競技に専念できる安心感は、五輪出場やメダルを目指すトップ選手にとってこの上ないものだろう。

 一方で、中央にヒトやモノが集まれば集まるほど地方は先細る。世界で覇権を争う京滋出身選手に目を向ければ、地元で練習するのは空手の荒賀龍太郎選手(29)=亀岡市=や自転車BMXフリースタイル・パークの中村輪夢選手(17)=京都市右京区=ら一握り。組織委幹部は都内のシンポジウムで「東京が発信拠点となりリーディングケースを担う」と地方への波及効果を訴えたが、そもそも熱狂が冷める東京オリパラ後にスポーツ界をめぐる環境がどうなるか分からない。

 1964年の東京五輪では、サッカーの敗退チームによる順位決定トーナメントが関西で非公式に催され、西京極競技場も会場となった。このときに「このままでは東西格差が広がる」と開催を誘致した関西の先人たちの気概をあらためて思い起こしたい。