トランプ米政権が、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱することを国連に正式に通告した。

 米国は中国に次ぐ世界2位の温室効果ガス排出大国である。既定路線とはいえ、190近い国と地域が加入する協定からの離脱は、改めて暴挙と言わざるを得ない。

 洪水や熱波、干ばつなど各地で異常気象による災害が続発し、温暖化リスクは高まるばかりだ。気象災害による世界の経済損失は年20兆円以上との試算もある。

 発効から3年となったパリ協定は、先進国と途上国に排出削減のための厳しい共通ルールを適用している。各国には実効性のある具体的行動が問われている。

 スウェーデンの少女グレタ・トゥンベリさん(16)ら若者の活動などで対策強化の機運は高まっている。大国の自分勝手なふるまいは、そうした状況に水を差すことになるのではないか。

 対策の実行が困難となり、途上国などが追随する動きにもつながらないか懸念される。

 大統領選の公約を優先する形でトランプ氏が離脱の意向を表明したのは2017年6月だった。

 国際社会は厳しく批判し、撤回を求めた。だが規定に基づき、通告が可能になった最初の日に手続きを取った。実際の離脱は1年後の20年11月4日で、大統領選とほぼ同じ時期となる。

 初日の離脱通告は、再選を目指し支持層に強くアピールするためだろう。トランプ氏は石炭や石油など化石燃料産業の振興を図っている。環境規制の緩和方針を示し、温暖化そのものを否定しているのは到底容認できない。

 大統領選の大きな争点になるとみられる。協定を重視する民主党候補が勝利すれば再加入の可能性もあるが、それに期待せざるを得ないのは残念だ。

 米国が温暖化対策の国際合意から抜けるのは、01年の京都議定書離脱に続いて2度目となる。パリ協定には新興国や発展途上国も参加しており、米国が問題視する「公平性」は格段に向上している。

 既に世界の脱炭素の方向性は明確であり、再生可能エネルギーや電気自動車の普及など経済成長のけん引役になりつつある。協定離脱は、そうした排出削減の取り組みを停滞させ、ビジネスの機会を失いかねない。

 米国民にも不利益となり、合理性を欠いた選択であることは明らかだ。危機を直視し、大国の責任を自覚するべきだ。