京都大学

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 全身の筋力が低下する筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬候補である既存薬「ボスチニブ」を使った治験で一定の安全性を確認したと、京都大iPS細胞研究所などのグループが30日発表した。病状の進行を止める可能性を示唆する結果も得たという。成果は10月3日から開催される世界神経学会議で発表する。

 ALSは運動神経が消失し筋力が低下する。国内の患者は約9千人だが治療法は確立していない。同研究所の井上治久教授らは既に、ALSの患者から作ったiPS細胞(人工多能性幹細胞)で病態を再現し、白血病治療薬の「ボスチニブ」が細胞死を抑えることを確認。2019年から治験を開始していた。

 治験は比較的進行が初期の患者12人を4グループに分けて行った。グループごとに異なる量のボスチニブを12週にわたって投与し、症状の変化を分析。各グループの中で最大となる1日400ミリグラムを投与した3人は、肝機能障害などが発生したため投与を中止したが、その後に回復した。より少ない投与量のグループを含め、ボスチニブ投与中の副作用管理が可能であることが分かったという。

 また、期間中の最後まで投与できた患者9人のうち5人は、症状の進行が停止した。ただ、偽薬などを投与した患者群との比較は行っていないため、ボスチニブ投与と症状停止の間の因果関係は現段階では証明できていないという。

 井上教授は「今回の治験は偽薬群のない少人数の患者で実施しており、科学的に正確な結果を確認するには今後、多人数での検証が必要となる」と話した。なお、ボスチニブのALSへの適用は日本や国外で承認されていない。