日銀の黒田東彦総裁の在任期間が8年半を超え、歴代最長を更新した。

 2013年3月の就任直後から大規模な金融緩和に乗りだし、自動車をはじめ輸出企業の足かせだった円高の是正と株価の上昇を演出した。

 だが「2年程度で2%の物価上昇率」という目標は実現せぬまま、達成時期の先送りが繰り返されてきた。大規模緩和の長期化による弊害が顕著になってきている。

 任期は残り1年半。新型コロナウイルスで経済が大きな影響を受ける中、デフレ脱却と大規模緩和の出口に向けてどう道筋を付けるか、改めて手腕が問われている。

 黒田氏は、旧大蔵省(現財務省)出身で、第2次安倍晋三内閣に任命され、18年4月に再任された。

 大規模緩和は、国債を大量に買い入れ、流通するお金を増やして景気を活性化させる異例の手法だ。「黒田バズーカ」と呼ばれたが、刺激効果が落ちるや追加緩和を重ねた。

 企業や個人がお金を借りる際の金利引き下げ効果を狙ったマイナス金利政策など、次々と緩和策を繰り出した。

 「異次元」の金融緩和は、株高や円安効果によって企業収益を引き上げた。

 だが、物価上昇率が最も高まったのは、消費税率が14年4月に5%から8%に引き上げられた直後の実質1・4%だった。

 黒田氏は「引き続き目標達成に向けて最大限努力する」としているが、日銀の7月時点の物価見通しでは、自身の現在の任期後の23年度でも1%の上昇にとどまる。

 金融緩和でインフレを誘導する政策に限界があることを認め、目標の在り方を含めた抜本的な見直しが必要だろう。

 懸念されるのが、長期にわたる金融緩和による副作用だ。

 企業の資金需要が低迷する中、貸出金利の低下で銀行の収益が圧迫されている。保険や年金などの資産運用も厳しい状況が続いている。

 本来、大規模緩和は短期集中で経済の成長力の回復を図るためのものだが、長期間の緩和により国債や株式をまとめた上場投資信託(ETF)の買い入れが膨らみ続けている。

 市場の価格形成にゆがみをもたらし、政府の財政規律にも緩みを生じさせているのではないか。

 大規模緩和は、安倍前首相が進めた経済金融政策「アベノミクス」の3本の矢のうち、第1の矢だった。

 これに続く機動的な財政政策や民間投資を喚起する成長戦略は、十分な成果をあげられておらず、日銀の金融政策頼みとなったのは否めない。

 コロナ禍で冷え込む景気の下支えするためには、大規模緩和の継続は当面やむを得ないだろう。

 ただ欧米の中央銀行は、量的緩和の縮小や利上げ時期を模索しはじめている。

 日銀も、大規模緩和による弊害を抑えつつ、金融政策の正常化に向けた出口戦略を練ることが求められる。