人里近くにクマが山から下りてくる例が増えている。

 環境省によると、クマ出没の報告件数は昨年度、全国で2万870件と前年度より2556件増加し、人身被害も158人に上った。いずれも比較可能な2009年以降で最多となった。

 本州と四国の一部にツキノワグマが生息している。最近は市街地での目撃も増えている。

 特に冬眠期を前に食料を探すとされる10~11月は出没件数が多く、人が被害を受ける危険性は高まる。遭遇しそうな場所には近寄らず、単独では行動しないなど注意が必要だ。

 出没が増えた背景として、餌となるドングリを探して行動範囲が広がったり、過疎化によって里山が荒廃して人の生活圏に近づきやすくなったりしたことなどが指摘される。

 環境省によると、被害に遭った状況は山菜・キノコ採り、アウトドアが目立った。人の生活圏では、農作業や日常生活、散歩・ランニングが多い。

 京都府では昨秋、クマに襲われる事故が4年ぶりに発生し、与謝野町と綾部市で計2人が負傷した。農林業への被害も発生している。

 府は鳥獣保護法に基づき、狩猟によるツキノワグマの捕獲を禁止してきた。絶滅を防ぐ目的だったが、府内の生息数は大幅に回復してきている。

 02年度には300頭まで減ったが、昨年度は1640頭と5倍以上になった。

 こうした状況を受け、府は野生生物のレッドリスト区分で絶滅の危機にひんする「絶滅寸前種」に指定してきたのを、3ランク下の「要注目種」へと見直した。

 さらに、来月始まる本年度の狩猟期間から、20年ぶりに狩猟を解禁する予定だ。

 クマ保護計画の転換点となる。ただ、適正な生息数の維持に努める必要はあるとして、捕獲の上限は設ける。

 クマは森林生態系の重要な構成種で、今後は保護と防除のバランスを図る具体策を探っていかねばならない。府県境を越えて移動するため、隣接府県とも連携した保護管理策も要るだろう。

 環境省はクマの出没対応マニュアルを3月に改定した。

 人とのすみ分けが鍵とした上で、生活圏への侵入を防ぐ対策を掲げる。果樹や生ごみを放置しないことに加え、住宅や農地と接する山林などの緩衝帯を、侵入しづらく隠れにくい環境に整備することが重要だとする。

 ドングリなどの豊凶調査により出没を予測することも勧める。商業施設にクマが侵入した事例を受け、市街地で銃を使用する場合に備えて警察と協議しておくことも追加した。

 各自治体も、果樹の伐採に補助金を出したり、クマが姿を現した場所に電気柵を設置したりするなど、積極的に取り組みを進めている。

 人口が減り、耕作放棄地が増えるなど、クマと遭遇する機会の増加は避けられないだろう。生態をさらに調査し、先を見据えた対策が求められる。