1万円、5千円、千円の紙幣を全面的に刷新し、5年後の2024年度上期から発行すると財務省が発表した。

 紙幣の一新は小泉純一郎内閣だった04年以来、20年ぶりとなる。

 1万円札の肖像画は日本の資本主義の父とされる実業家の渋沢栄一、5千円札は津田塾大の創始者で女性教育の先駆けとなった津田梅子、千円札は近代医学の基礎を築いた北里柴三郎へと変わる。

 明治以降の文化人から選定するという従来の考え方を踏襲しているが、安倍晋三首相が功績を高くたたえてきた渋沢を用いるなど、政権のカラーも強くにじむ人選である。

 だが、今回の紙幣刷新で特に目立つのは、異例ともいえる公表の早さだ。

 公表時期は、前回が2年3カ月前、前々回は3年3カ月前。それに比べて、今回の5年前は際立っている。

 麻生太郎財務相は、その理由として印刷開始や自動販売機の設備更新にかかる期間を挙げ、新元号公表と近くなったことについては「たまたま重なっただけ」と関連を否定した。

 だが、新元号公表の翌日に安倍首相が麻生氏にゴーサインを出したといい、その7日後に新紙幣のデザインまで発表している。

 このタイミングをみれば、むしろ改元に合わせて周到に「新時代」の祝賀ムードを演出し、夏の参院選や秋の消費税増税を控えて政権浮揚につなげたい思惑があったとみる方が自然だろう。

 紙幣刷新の主目的は、あくまで偽札を防ぐことにある。これまで約20年ごとに一新してきたのはそのためだ。

 国民の間では新元号から続く流れに歓迎ムードも広がるが、冷静に今回の刷新の意味を受け止める必要がある。

 新紙幣では、肖像の3次元(3D)画像が回転するホログラムを世界で初めて導入するなど最新技術を用いて偽造を防ぐ。まずはしっかりと対策を講じてもらいたい。

 紙幣刷新では、銀行の現金自動預払機(ATM)や飲料などの自動販売機は改修や入れ替えが必要になるため、特需による景気浮揚を期待する向きもある。

 ただ、政府が25年に現金を用いないキャッシュレス決済の比率を欧米並みの40%に高める方針を掲げていることもあり、経済効果は限定的との指摘もある。

 紙幣刷新を、むしろお金の未来を考える好機と考えたい。