名刹(めいさつ)、名所の連なる東山の麓で桜は満開となり、花吹雪も見られるころを迎えた。そこに落花狼藉(ろうぜき)の振る舞いをするものが現れたというから、穏やかではない▼花見の酔客かと思ったが野生の親子ザルであった。出没する知恩院や大谷祖廟(そびょう)、蹴上インクライン辺りで、腕や足をかまれる人が続出している。招かざるものである▼これ以上、被害を出してはならない。京都市と警察は、付近の警戒を強化した。以前から置かれている看板は、サルに「近づかない」「食べ物をあげない」「写真を撮らない」と注意を呼び掛けている▼当面は、出合い頭の争いを避けるため、これらを心に留めたい。とはいえ、恒久的な解決に向けては、サル側の事情も、できる限り理解しておいた方がよい▼女性がじゃれつく子ザルを振り払おうとしたところ、親ザルが現れて、かみついたケースがあったそうだ。市動物園は、群れからはぐれたとみられる親ザルは警戒心が強く、子ザルに近づく人を敵とみなすと指摘している▼霊長類学者河合雅雄さんらの編著「動物たちの反乱」は、サル出没の一因は人の里山放棄にあるとし、生息環境を整えたうえで、里は人、山はサルとのすみ分けをサルに教える必要がある、と説く。効率だけを優先する猿知恵を排し、穏やかに共存したい。