自身が望む介護や医療について家族と事前に話し合う大切さを伝えた「終活講座」(京都市下京区・西本願寺聞法会館)

自身が望む介護や医療について家族と事前に話し合う大切さを伝えた「終活講座」(京都市下京区・西本願寺聞法会館)

 「終活」の一環として、本人が望む介護や医療についてどのように家族に伝えるかを考える講座「お寺で知る終活講座」が西本願寺聞法会館(京都市下京区)で開かれた。認知症が進行して意思を伝えられなくなったり、事故や急病で意識不明になったりした場合に備え、事前に家族と話し合うことの大切さを確認した。

 浄土真宗本願寺派総合研究所が企画。認知症について市民講座や講演を京都市内で行っている団体「おれんじ畑」のメンバーの、介護福祉士の増本敬子さん(64)と精神科医の東徹さん(42)が登壇した。

■親子喧嘩も「弱ってしまう前に」

 本人の希望について話し合うには、家族との距離感が問題になる。増本さんは精神科病院の認知症病棟に勤務当時の経験を紹介した。

 ある女性の退院時、子どもたちは女性の帰宅を拒んだ。女性は経済的に裕福で、介護サービスを使えば在宅で十分暮らせるように見えたが、子どもたちは「どうせ何も分からなくなるから」と冷ややかで、既に入所施設も決めていた。

 子どもにとって女性はきつい親だったようで、家族は「自分の生き方を全て否定されてきた」と反感を抱えていたという。ただ、増本さんには病床で女性の別の側面も見えていた。戦時中、空からの銃弾が子どもたちに当たらないよう、必死で背負って逃げた体験を繰り返し語っていた。

 増本さんは「(親子で)けんかをするなら弱る前にすべきだ。しっかり言える時期に自分の意思を伝え、子どもとの関係を見つめ直したり、あるいは(拒絶されるなら)成年後見制度の利用を考えたりした方がいい」と強調した。

 さらに、本人が趣味嗜好(しこう)を家族や周囲に伝えていれば、外で行方不明になったときに探す手掛かりになったり、思いが尊重されて生活を送りやすかったりすると指摘。「さまざまな好き嫌いの情報を家族に話したり、書いておいたりすることがとても大事」と呼び掛けた。

■意識戻らない事態も想定を

 東さんは病院勤務医の立場から家族へのアドバイスをした。

 急病などで意識のない本人に代わり、苦痛を伴ったり、必ずしも意識の回復が見込めなかったりする治療を行うかどうかについて、家族はその場で決断を迫られる。

 例えば、自力で呼吸できなくなった場合にのどから気管に管を通して空気を送る「気管挿管」について、挿管後は自発呼吸が戻るまで抜くことができず、意識が戻らないまま何年も生き続ける可能性があると説明。骨折の恐れもある心肺停止時の心肺蘇生や、自力で食事を取れなくなったときの胃ろう造設などの例も挙げ、「まだ若くて回復が見込めるから積極的に受けたいとか、十分に生きたから無理したくないとか、想定して考えを家族に伝えておくことが大切」とした。