香港の民主化運動を支えてきた民間団体が、相次いで解散に追い込まれている。

 先月末に1989年の天安門事件を巡る大規模な追悼集会を開催してきた団体が、今月初めには民主派の中核だった労組連合が、それぞれ解散することを決めた。

 民主派勢力の主要団体は、これでほぼ消滅することになる。

 中国共産党への異論を許さない習近平指導部からの圧力があったことは明白だ。敵対すると見なした相手を力ずくで抑え込む強権統治が加速している。

 自由な政治・社会活動を認めない姿勢は、世界各国の中国に対する不信感をさらに高めるだけだ。

 天安門事件の追悼集会を行ってきた団体は、国家安全維持法(国安法)の国家政権転覆扇動罪で起訴され、活動が難しくなった。

 この団体が開設し、天安門事件関連の写真や遺族証言などを大量に掲載していたウェブサイトも、警察の要請で閉鎖させられた。

 労組連合は、2年前の抗議デモに会員を動員したことが国安法に違反する可能性があると、親中派メディアに報じられていた。

 香港では今年、習指導部に批判的な新聞社が廃刊に追い込まれたほか、最大の教職員組合が解散するなど、批判勢力を一掃する動きが続いた。

 昨年6月の国安法施行以来、同法違反容疑での逮捕者は100人を超えている。

 量刑も重い。高等法院(高裁)は今年7月、抗議デモの際に香港独立を意味するスローガンを書いた旗を掲げてバイクで警官隊に突入したとされる男性を禁錮9年とした。国安法違反事件では初の量刑言い渡しで、重罰で市民を萎縮させる狙いだろう。

 憲法に当たる香港基本法は言論や集会の自由を定めるが、国安法は違憲審査の対象にならない。習指導部は「法治」を重視するというが、それは欧米などでいう法の支配とは異なる独善的な概念だ。

 習氏は7月の共産党創建100年の演説で、国安法制を着実に実行し、香港の長期繁栄と安定を保つと述べた。来秋の党大会で異例の3期目入りを目指し、引き締めを図っているように見える。

 世界第2位の経済力を持つ大国の非民主的振る舞いは、同様に強権的な政権が登場した国々にも影響を及ぼす。民主主義諸国との亀裂をますます深くし、世界の分断を加速させかねない。

 国際社会は、習指導部の人権を巡る姿勢に毅然(きぜん)と対応すべきだ。