新型コロナウイルスワクチンの2回接種を終えた人の割合が人口の6割を超える中、未接種者に対する差別が問題となっている。

 ワクチンの接種は、予防接種法に基づく努力義務が課されているが強制力はない。打つかどうかはあくまで個人の判断に委ねられている。

 病気などの事情で受けられない人もいる。いわゆる「同調圧力」で接種を迫ったり、接種を受けない判断をした人を差別したりすることは決して許されない。未接種者の人権を尊重する意識を社会全体で共有する必要がある。

 政府は9月、接種を入学や雇用の条件にすることは差別に当たるとする「基本的な考え方」を公表した。

 一方、未接種者への差別禁止を明確化した法律はない。新型コロナ特別措置法は差別対策を国と自治体の責務としているが、感染者が主な対象で未接種は想定外だ。

 このため三重や和歌山など8県は未接種者への差別を禁じる条例を制定している。ただ、どのような行為が該当するのか判断が難しい。

 ワクチンを打たなければ雇わない、異動させる、と会社から言われたなどとする被害の相談は、各自治体の窓口に多く寄せられているという。

 政府は、差別の実態を踏まえて禁止事項を具体化し、法整備を含めた実効性ある対策につなげてほしい。

 接種歴の証明書「ワクチンパスポート」の活用を柱とした行動制限緩和の議論では、未接種者への配慮が欠かせない。

 政府は、接種証明に加え陰性証明を組み合わせる「ワクチン・検査パッケージ」の仕組みを導入する。証明書があれば飲食店の利用やイベント参加で便宜が受けられるとする一方、提示がない人への法外な料金請求などは差別につながるとして注意喚起している。

 不当な取り扱いを防ぐ手だてやチェック体制が求められる。未接種者が不利益を被らないようPCR検査を受けやすい環境も整備すべきだ。

 海外では、経済再開を急ぐため接種を義務化する動きが出ている。だが、ワクチンの有効性や安全性に疑念を持つ人も少なくなく、未接種者への差別を助長するとして反対運動も起きている。

 ワクチンへの不安を払拭(ふっしょく)するためにも、政府にはこれまでの接種データや科学的知見を十分に開示することが求められる。