比叡山麓 仏の縁がつなぐ宝

法勝寺から受け継がれた「薬師如来坐像」(重要文化財、鎌倉時代)

 比叡山の麓(ふもと)にある天台真盛(しんせい)宗総本山、西教(さいきょう)寺(大津市坂本5丁目)。飛鳥時代に聖徳太子が創立したと伝えられ、平安時代に延暦寺の関連寺院として復興した古刹(こさつ)には、長い歳月の中で蓄積された知られざる寺宝が数多く現存する。重要文化財の薬師如来坐像や仏画「釈迦(しゃか)如来像」(いずれも鎌倉時代)、千利休の書状…。その寺宝の数々から選りすぐった約120件を初めて一挙公開する企画展「西教寺―大津の天台真盛宗の至宝―」が9日から大津市歴史博物館(同市御陵町)で始まっている。

貴族が歓談する様子が描かれている「扇面法華経」(重要文化財、平安時代)
経典「礼仏阿弥陀懴」(15世紀の朝鮮時代)の巻末。阿弥陀三尊を中心に極楽浄土の様子が、赤い紙に金泥で緻密に描かれている

 展示品には「扇面法華経」(重要文化財)といった平安時代の貴族の暮らしが垣間見える品も。朝鮮半島から伝わった15世紀の経典「礼仏阿弥陀懴(らいぶつあみだせん)」、中国で12~13世紀(金~元時代)に作られたとみられる銅鏡「人物文鏡」といった舶来物、蝦夷地(えぞち)に住むアイヌの人々の風俗を記した絵巻物「蝦夷古記」まであり、仏教を縁につながれた寺宝の奥深さと幅広さに驚かされる。

中国から伝来したとみられる銅鏡「人物文鏡」(12~13世紀)
アイヌの人々が描かれた絵巻物「蝦夷古記」(江戸時代)

 西教寺になぜこれだけの品々が存在するのか。それは歴史に起因する。

 西教寺は鎌倉時代には現在の京都市左京区にあった大寺院「法勝寺(ほっしょうじ)」の末寺となった。室町時代に真盛上人が入寺すると、上人を慕う人々が全国から集まり、念仏と戒律を重んじる天台宗の中でも独自の位置を占めるようになった。戦後に天台真盛宗として分立している。

木像「真盛上人坐像」(安土桃山時代)
後土御門天皇の直筆「後土御門天皇宸翰真盛上人号」(重要文化財、室町時代)

 薬師如来坐像など寺宝の中核は、応仁の乱(1467~77年)で荒廃した法勝寺から受け継いだ遺産で、京の都で育まれた至宝。西教寺は織田信長による比叡山焼き討ち(1571年)で焼失したが、その際も多くの寺宝が疎開し、難を逃れている。交易が盛んだった北陸・中部地方と滋賀県に末寺が多く、そのネットワークによって多くの舶来物が集まったとみられる。

鉢を持つ釈迦が描かれた仏画「釈迦如来像」(重要文化財、鎌倉時代)

 大津市歴史博物館の寺島典人学芸員は「西教寺は比叡山の麓で独自の天台宗文化を育んだ。企画展はその全ぼうをかつてない規模で紹介できる貴重な機会」と話している。



【会期】10月9日~11月23日(月曜と11月4日休館)
【開館時間】午前9時~午後5時(入場は午後4時半まで)
【会場】大津市歴史博物館(同市御陵町2の2)077(521)2100
【観覧料】一般800円、高校・大学生400円、小中学生200円
【主催】大津市、大津市教育委員会、大津市歴史博物館、京都新聞
【関連講座】「持戒念仏の生涯―真盛上人絵伝記を垣間見る―」(10月14日)、「西教寺と寺社伝奏坊城家」(10月21日)、「伝教大師最澄の生涯と思想」(11月10日)、「天台大師像をもちいる儀礼」(11月18日)、時間はいずれも午後2時半~4時、有料、事前申し込み必要。問い合わせは大津市歴史博物館へ。