光さえ逃れられない「黒い穴」の姿を、人類は初めて目にすることができた。

 偉業に違いない。得られた画像が示すスケールの大きさに、畏れを抱く人もいるはずだ。

 地球から遠く離れた銀河の中心にある巨大なブラックホールの撮影に、日本などの国際研究チームが初めて成功したという。

 周りを取り巻くガスから発する光の中心に、輪郭がくっきりと写っている。

 ブラックホールは、100年以上前にアインシュタインの一般相対性理論をもとに、存在が予言されていた。

 これまで、吸い込まれていくガスなどから出るエックス線を観測した例はあるが、画像として捉えられたことはない。

 撮影によって、目に見えるかたちで、その存在が証明されたといってよいだろう。

 あれほど重いものが、一体どうやってできたのか。周辺の高温ガスは、星の形成にどう影響したのか。まだまだ、分からないことだらけである。

 ガスを吸い込む様子を詳しく観測できれば、重力の極めて強い場所で物質がどう動くか知ることにつながり、ビッグバンの前に超高密度で極小だったとされる初期の宇宙の様子もうかがえる。

 すると、星や銀河が出来上がる過程、つまりは宇宙の歴史が分かるそうだ。今回の快挙を、多くの謎の解明に向けた第一歩としてほしい。

 撮影されたのは、地球から約5500万光年も離れているおとめ座M87銀河の中心にあるブラックホールである。どのような方法で、姿を捉えたのか。

 見える光より波長が長く、途中にある障害物の影響を受けにくい電波を、データとして、なるべく多く集めなければならない。

 そこで、米国、欧州、南米、南極など世界6カ所の望遠鏡を組み合わせ、地球サイズの仮想的な望遠鏡をつくった。

 これは「超長基線電波干渉計(VLBI)」方式と呼ばれる。

 日本の国立天文台水沢VLBI観測所(岩手)や東北大、広島大の関係者に加えて、欧米などから200人を超える研究者が参加している。

 宇宙の研究においては、商業や軍事に利用するため、各国が覇を競う傾向もみられる。今回の初撮影は、研究者らによる国際協力の結果、得られた成果である。この点も、高く評価しておきたい。