年金行政に対する信頼を揺るがす失態がまたも繰り返された。

 日本年金機構は、今月に発送した年金受給者宛ての「年金振込通知書」で誤送付があったと発表した。対象地域は愛知、三重、福岡の3県で計約97万件に上る。

 振込通知書には、送付先とは別人の基礎年金番号や年金額、振込先の金融機関と支店名などが記されていた。

 あってはならないミスである。これほど大規模の誤送付がなぜ起こったのか、徹底的な原因究明と再発防止策が欠かせない。

 誤送付は、通知書を受け取った人から別人の情報が記されているとの問い合わせが機構に相次ぎ、発覚した。

 機構は、年金支給額に影響はなく、現時点で情報の悪用による被害は出ていないとする。だが、個人的な年金関連情報の流出は受給者に不安を抱かせる。

 委託先の会社が印刷する過程で誤りが生じたと説明しているが、業者の単なる作業上のミスでは済まされない。印刷内容のチェック体制をはじめ、委託先の選定や監督体制などに問題はなかったのか。情報管理の在り方を根本から見直す必要がある。

 年金機構を巡っては、記録管理の不備などによる不祥事が相次いでいる。

 旧社会保険庁時代の2007年には、誰のものか特定できない約5千万件もの「消えた年金」問題が発覚した。

 組織再建のため年金機構が10年に設立されたが、今回と同様に札幌市の年金受給者約4万人に誤った年金額や基礎年金番号を記した通知書を発送していた。サイバー攻撃による約125万件の情報流出、約600億円の支給漏れなども起きている。

 看板を付け替えても、ずさんな組織体質は何ら変わっていないと言われても仕方がない。高齢者らの生活を支える公的年金制度の実務を担い、機密性の高い個人情報を扱っているという責任感や自覚に欠けているのではないか。

 政府は、業務の効率化や利便性の向上を目的に、マイナンバーと基礎年金番号の連結を進めている。だが、このような失態が繰り返されては、国民は安心して協力できない。

 失われた信頼を取り戻すには、組織の抜本的な改革が不可欠だ。監督官庁である厚生労働省は、実効性ある再発防止策や適切な運営体制づくりに努め、しっかりと責任を果たさねばならない。